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ごめんね、大好き⑧

ピンポーン。 真夜中にインターホンが静かな室内に響き渡る。俺は少しだけ罪悪感を感じながらも、そっと外から声をかけた。 「智彰(ちあき) 、葵だよ。開けてよ」 「え?葵さん?」 「うん、葵だよ。ごめんね、黙ってきて」 「ちょっと待ってて」  インターフォンからは聞きなれた声が聞こえてくる。 「葵さん、上がっておいで」  優しい声と共に、オートロックのマンションの入口が開いた。   「ごめんね、こんな真夜中に」  部屋に入るなり深々と頭を下げる。俺は両手にいっぱいの荷物を、「よいしょ」と床に下ろした。 「別にいいけど、どうしたの?」 「ん~、別に。しばらく智彰のアパートに泊まらせてもらおうと思って……」 「え?」  あまりにも突拍子もない俺の発言に、智彰が思わず目を見開いた。 明らかに戸惑っているのが、見て取れる。 「泊まる場所って、葵さん、彼氏と同棲してるんだろう?」 「そうだけど……」  痛い所を突かれた俺は、唇を尖らせたまま俯いた。  だって、今の俺には帰る場所なんてないんだから。 「その彼氏から逃げたいんだよ。もう、あの家には戻らない」 「逃げたいって……なんかあったのか?」 「あった……けど言いたくない。ただしばらく、仕事は休む予定だし、彼氏とは……」  目頭が熱くなってきたから、唇をギュッと噛み締めた。 「彼氏とは?」  小刻みに震える背中を、智彰が優しく摩ってくれる。 「彼氏とは別れたから」 「はぁっ?」 俺と成宮先生が付き合って、大分時間がたったけど、喧嘩したのなんか智彰は見たこと無いのかもしれない。ましてや別れ話なんて。 「良くわからないけど、訳ありなんでしょ?じゃあさ、優しい優しい智彰君が、可愛い葵さんを慰めてあげますよ」 そう言いながら、智彰は俺を抱き締めてくれる。 「でもさ、予想もしなかった、突然の可愛らしい迷い犬の訪問は……凄く嬉しいよ。ゆっくりしていって」  そう言いながら微笑む智彰は本当にイケメンで……男の俺でもドキドキしてしまった。  

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