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ごめんね、大好き⑩

「けど布団一組しかないよ?しかもベッドシングルだし」 「大丈夫だよ、一緒に寝るから」 「え?」  智彰が、俺の言った何気ない一言に目を見開く。かなりびっくりしているようだ。 「案外男二人でも、一枚の布団に寝られるもんだよ?」 「あー、そうなんだ」  でも、俺は智彰が何をそんなに驚いているのかがわからなかった。 「いつも二人でくっついて寝てるんだな?」  智彰が、少しだけ寂しそうに俺の方を見て笑う。 「簡単に想像つくよな、あんた達が仲良くくっついて寝てる光景がさ」 「智彰……?」  俺は智彰が何を考えているかわからなかったら、子供をあやすように無意識に頭を撫でてやる。智彰はそんな俺の手を掴み、そっと唇を寄せる。 「ちょ、ちょっと……智彰!?きょ、距離が近い!」  そんなあまりにも自然なイケメンの仕草に、恋愛経験の少ない俺はドキドキして、思わず声が裏返ってしまった。 「しばらくここにいるの?」 「いてもいい?」  俺が智彰を見上げれば、今にも泣き出しそうだった顔に、一瞬で笑顔が戻った。 「うん!ずっとずっと一緒にいよう?」 「ずっと、ここにいていいの?」 「いいよ。ずっとここにいな?」 「本当!?ありがとう」  俺は嬉しくて、思わず智彰に飛びつく。そんな俺を優しく受け止めてくれた。 「ずっとさ、葵さんを独り占め出来たらいいのにな……」  耳元で、智彰の切ない声が響く。 「この迷い犬に、首輪をつけることができたら……どんなに幸せだろうな」  痛い位ギュッと抱き締めてくれる智彰に、なんやかんや言っても寂しくて仕方がない俺は、夢中でしがみつく。  寂しくて、悲しくて……心が壊れてしまいそうだった。  

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