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ごめんね、大好き⑫

「でさ葵さん。なんで突然仕事を休んだり、兄貴を避けなきゃいけないわけ?」 「ん?」  頑張って作った夕飯をテーブルに並べながら、突然投げ掛けられた智彰の問いに、俺は露骨に嫌な顔をしてしまった。  だって、できたら触れられなくないし、そもそも思い出したくもない。 「こんだけ協力してあげてんだから、俺には知る権利があると思うけど?」 「う~ん」  俺は唇を尖らせながら、意味不明の唸り声を上げてしまう。 「なぁ、葵さん?」 「絶対引かない?俺のこと嫌いにならないって約束してくれる?」  泣きそうな顔で智彰の事を見つめたら、明らかに智彰が動揺しているのがわかった。 それでも、その直後、自信に満ちた顔でニコッと笑う。その顔はやっぱり成宮先生にソックリで、俺は思わず息を飲んだ。 「大丈夫。葵さんが、今から話す内容次第ではさ……俺が葵さんをお嫁さんにもらってあげるよ。兄貴より幸せにしてやるから……遠慮なく話してよ?」 「智彰……お前は本当にいい奴だな」 「え?それ本気で言ってる?」  俺が目を輝かせながら智彰を見つめれば、智彰が呆れた顔をしながら大きな溜息をついた。 「普通さ、ここまで言われれば気付くでしょうに?」 「ん?何が?」 「もういいや、話を続けてよ」 「うん」  智彰が心底呆れたような顔で俺を見つめた後、「どうぞどうぞ」と言うようなジェスチャーをして見せる。それに背中を押された俺は、勇気を振り絞ってポツリポツリと話し始めた。

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