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ごめんね、大好き⑬

「実は……」 「実は?」  俺の緊張に釣られてか、智彰まで緊張したような面持ちをしている。   その場の空気がピンと張り詰めた。 「千歳さんとしてるとこを、柏木に見られた……」 「してるとこって?何をしてたの?」 「だから、その……」 「まさか!?してるとこって、エッチしてるとこ!?」  智彰が目をこれでもかという位見開いたから、俺は顔を真っ赤にしながら頭を抱えてた。 「それとも、チュウしてるとことか?」 「違う違う……ガンガン本番ってとこ……」  もう顔から火が出そうで、両手で顔を覆いながら、ブンブンと勢いよく首を横に振る。  もう聞かないで……思い出したくもない……。  これ以上聞かれたら、死んじゃう……。 「もしかして病院でしてたの?」 「うん。医局で……」 「い、医局!?」 「うん。ごめんなさい」 「それはそれは…」  智彰が沈黙してしまったことが凄く怖い。  軽蔑されても仕方ないことをしてしまったという自覚があるだけに、俺は本当に自分が情けなかった。 「と、とりあえず冷めちゃうから飯食うか?」  落ち込み過ぎて、顔さえ上げられない俺の頭を智彰が優しく撫でてくれる。 「美味しそうな肉じゃがだね。ありがとう」  智彰の優しい言葉に、涙が溢れ出しそうになる。これで智彰に愛想をつかされたら、俺は本当に一人ぼっちになってしまうから。 「気が済むまでここにいればいい。大事にしてやるから」  そんな優しい智彰の声を聞く余裕すら、今の俺にはなかった。

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