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ごめんね、大好き⑮

 翌朝目を覚ますと、隣に寝ている智彰はもう起きていて……楽しそうに俺の髪を自分の指に巻き付けて遊んでいた。 「葵さん、おはよう」 「あ、うん……おはよう」  ニッコリと笑いながら、優しい手つきで俺の髪を梳いてくれる智彰に、俺は意味もなくドキドキしてしまった。  やっぱり智彰は成宮先生に良く似ている。似ているけど、智彰の手の方が大きくて、骨ばっている。俺を抱き締める腕も成宮先生より逞しくて。  綺麗って言葉がピッタリな成宮先生に比べて、智彰はかっこいいっていうイメージだ。  サラッと前髪を搔き上げられて、そのまま頬にそっと触れられれば、ピクンと体が跳ねる。  その優し過ぎる指使いに、俺の体が沸々と反応し始めた。まるで、弱火でゆっくりゆっくり沸騰させられているかのように。  体が熱くて、心がフワフワして……自分自身を見失いそうになってしまう。  結局俺は、そこら中でフラフラしている優柔不断な人間なんだって、自分自身が情けなくなった。 「葵さん……」 「ん?」 「ずっとずっと一緒にいてくださいね。兄貴の所になんて、帰らないでください」 「智彰……」 「俺が、大切に大切にしますから」  智彰の苦しそうな切なそうな表情に、胸がキュッと締め付けられる。それと同時に、心がザワザワと波立つのを感じた。  なんで、智彰はこんな顔をするんだろうか……俺にはその理由がわからない。本当に、俺は馬鹿で鈍感だから。  ごめんな、智彰。 「葵さん。こっち向いて」 「え?」  智彰が耳元で囁いた後、顎を捕らえられて少しだけ強引に上を向かさせられてしまった。 「葵さん」  優しく名前を呼ばれて、智彰の眼差しと視線が絡み合う。  チュッ。  次の瞬間、フワリと唇に温かくて柔らかい物が触れて……一瞬で離れて行った。 「もう起きようか?今日は俺休みだから、どっかに出掛けたりする?」 「あ、うん。そうだね」 「それより腹減ったぁ!」 「い、今、朝ご飯作るね」 「俺、目玉焼きが食べたい!ベーコンが乗ってるやつ」 「はいはい。わかったわかった」  俺の横で、智彰がニコニコ笑いながら、「んー!」と大きな伸びをしている。  そんな呑気な智彰を見ていれば、ついさっきのあれは、一体何だったんだろうか……なんて悩んでいる自分が馬鹿らしくなってしまった。 「そっか。さっきのは気のせいか……」  俺は、そう自分に言い聞かせながらベッドから起き出して、朝食を作るためにキッチンへと向かったのだった。  

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