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ごめんね、大好き⑱
「智彰、お風呂空いたよー」
「うん。って、また髪が……葵さんここに来て」
風呂から出てきた俺の髪から、ポタポタと雫が垂れているのを見た智彰が、タオルを広げて俺に声をかけてくる。
「風邪ひくでしょう?本当に子供みたいですね」
「智彰、ありがとう」
ワシャワシャ優しく髪を拭かれれば、凄く気持ち良くて思わず目を細めた。それから、プファーという音と共に温かい風が髪を揺らしてく。
「あったかくて気持ちいい」
俺は思わず大きな溜息をついた。
そんな風呂上がりの俺を見て、智彰が何かをポツリと呟いた。
「葵さんは、きっと兄貴に抱かれてるときは本当に可愛くて、エロいんだろうな……。簡単に想像がつく」
でも、そんな智彰の声はドライヤーの音に掻き消されて、俺の耳には届くはずなんてない。
むしろ、ドライヤーの温かい風と、自分の髪を優しく撫でていく智彰の指の心地よさに、ポーッと夢心地になっていった。どんどん心地よくなっていって、思わずウトウトしてしまう。
俺は、智彰に対していつも受け身的な態度で接していて、もうそれが、もう当たり前のようになっている。
こんな女の子みたいな扱いに慣れている俺は、なんやかん言っても、俺が普段から成宮先生に甘やかされている事なんてきっとバレてしまっているんだろうな……って思うと恥ずかしくなった。
でも仕方ない。所詮、俺は成宮先生に抱かれていた猫なのだから。
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