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ごめんね、大好き㉕

 今の俺は、音信普通。そして、所在不明。  またの名を、迷い犬。  恋人の前から姿を消して、数日が経とうとしていた。  成宮先生にとって、俺の存在なんてちっぽけ物だと思ってた。  あんな完璧な存在なら、女でも男でも、誰でも簡単に彼の虜になっしまう。だから、俺みたいな『The普通男子』に成宮先生が固執する必要なんて全くないんだ。  だから、俺は自棄になっていた。  ううん、そうじゃない。  俺が必要だって、あの人に全身で求めて欲しかったんだ。そんな子供みたいな我儘な心が、俺をどんどん天邪鬼にしてしまう。  今の俺は、本当に可愛くない。 あの、全米が震撼する程の超束縛男、「成宮千歳」の前から姿を消した俺は、正直成宮先生がどんな反応をするかなんて想像もつかなかった。  いなくなった俺のことを心配して、探してくれるだろうか。それとも、あっさりと別れを受け入れて、案外ケロッとしているのだろうか。  ただ、小児科の小山部長から、「こっちは大丈夫だから、ゆっくり体を休ませてください」と連絡が来て以来何の音沙汰もないんだから、きっと成宮先生が上手く処理してくれているんだろう。  そんな中、成宮先生は必死に俺の事を探していてくれたらしい。 その時の成宮先生にできることは、俺の交遊関係を、手当たり次第当たることだけだった。けど、なかなか手かがりはなく、途方に暮れて……。   「俺が傷つけたんだから仕方ない」  そう寂しそうに笑う先生を見れば、柏木の心だってズキズキと痛む。  それと同時に、どれくらい俺の事を思っているか……ということも伝わってきたって、後になって柏木が教えてくれた。 「お前、本当に愛されてんだな?あの、天下の成宮先生に」  そう言いながら照れくさそうに笑っていた。  

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