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ごめんね、大好き㉘

「葵……葵……」  足音と共に、聞き慣れた声が静かな室内に響き渡った。  ドクンドクン。指先が冷たくなって、心臓がうるさい位鳴り響く。  一体俺は、どんな顔をして先生に会えばいいのだろうか……。  どうしよう、わからない。  だから、怖いし不安で仕方ない。  誰かに恋をすると、こんなにも惨めで情けなくなってしまうんだ……もう、消えてしまいたい。    フワリ。  次の瞬間、俺の頭にそっと何かが置かれる。それが、成宮先生の手だって気付くまでに、少しだけ時間がかかった。懐かしいこの感触に、俺の胸に熱い物が込み上げてくる。 「葵、見つけた」  俺を布団ごと、そっと抱き締めてくれた。 「なぁ、葵ごめんな。仲直りしよう?」    あ、あの成宮千歳が……謝った……。  予想もしていなかった行動に、俺は必死に首をフルフルと横に振る。 「葵……」  俺をギュッと抱き締めて、足を絡めてくる。布団こそあるものの、俺はスッポリと成宮先生の腕の中に納まってしまった。 「どうしたら許してくれる?」  俺はまた、首を横に振る。   だって、もうどうしたらいいかなんてわからない。  それなのに、心臓がうるさい位にドキドキしている。もう、泣きたくなった。 「アイス……買ってあげるから?」 「………」  明らかに、俺の動きが止まってしまう。何を隠そう、俺はアイスが大好きなんだ。その反応を成宮先生が見逃すはずもなく……更に追い討ちをかけてくる。 「しかもHaagen-Dazsだよ?全種類買ってあげる。だからさ、顔見せて?」 「………」 「布団、剥いでいいか?」 「………」  あまりにも優しい成宮先生の声に、俺の胸は熱く、そして甘く締め付けられた。 コクン。 俺は小さく頷く。 「布団、剥ぐからな」  もう一度確認されてから、そっと布団を剥がれる。  突然差し込む照明の光に目を細めれば、目の前には恐ろしい程に整った顔立ちをした男の人がいた。 「あ……」  久し振りに見る成宮先生の姿に、目頭が熱くなる。  心と、体が小さく震えて……愛おしさが一気に心の中から溢れ出した。  まるで、春を待ち侘びていた花達が、一斉に咲き乱れたかのように……。

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