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溢れ出した思い⑦
「ごめんなさい、ごめんなさい」
子供みたいに涙をポロポロと流しながら、俺は成宮先生にしがみつく。そんな俺に、成宮先生が酷く優しい声で問いかけてきた。
「なぁ葵。お前、一人前の医者になって、病気の人を助けてあげたいって思うか?」
その言葉に少しだけ躊躇いを感じながらも、俺は小さく頷く。
「俺は、早く成宮先生に迷惑を掛けないで済むような、一人前の医者になりたいです。そして、たくさんの病気の子供を助けたい」
「じゃあさ……」
成宮先生が俺の顔を覗き込んでくる。そのあまりにも整った顔立ちに、俺の鼓動がトクントクンと甘く高鳴った。
「葵は、俺の事が好きか?」
「え?」
「俺の事を、心の底から愛してくれてるか?」
「千歳さん……」
この成宮千歳らしくない少しだけ不安そうな表情に、胸がギュッと締め付けられる。
どうしてこのハイスペックなスーパードクターが、俺みたいな凡人のことで、こんな顔をするんだろうか。
俺にしか見せないそんな表情を見せられたら、俺はもう……。
好きって思いが溢れ出して、止まらなくなってしまうじゃんか。
「大好き。千歳さんが大好き」
成宮先生に抱き着く腕に更に力を込めて、そのまま彼の唇を奪い去る。チュウっと強く吸い付いて、静かに唇を離した。
「千歳さんを愛してます」
「そっか……」
俺の言葉を聞いた成宮先生が静かに笑う。それは、俺が大好きな笑顔だった。
「なら、お前のミスくらい、いくらでもカバーしてやるよ」
「え?」
「俺がついててやるから、これからも自信を持って好きにやってみろ」
そう言いながら、クシャクシャと少しだけ乱暴に頭を撫でてくれた。
「葵には、俺がついてるよ」
「千歳さん……」
「だから、大丈夫だ」
「ありがとう……ございます……」
こんなに優しい恋人を目の前にして、俺は思う。
生けていれば色々な事がある。
ましてや、仕事なんて人生の大半を注ぎ込む時間であって、多くの人がストレスを感じる要因だろう。
ついさっきまでの俺は、そんな仕事という重圧に押し潰されそうになっていた。
恐らく、これから先も何とか心を奮い立たせて出勤した俺が、再びアクシデントレポートを書く事があるかもしれない。
それでも、きっと大丈夫。
俺には、こんなに最強の味方がいるんだから。
だから、大丈夫だ。
「それよりさ、ちゃんと飯食って、ちゃんと寝て、早く元気になれよ」
「あ、はい。すみません」
「いつまで俺に禁欲させる気だよ。もうそろそろ、我慢の限界なんだけど?」
「え、えぇ!?」
「職業柄、弱ってる人間に無理させる訳にはいかねぇもん」
「なら、そーっやりますか?」
「はぁ?そーっと?」
「はい。そーっと」
「……ふふっ。じゃあ、そーっとやるか?」
「はい。そーっとね」
【溢れ出した思い END】
◇◆お知らせ◆◇
いつも葵君&成宮先生を応援していただきありがとうございます。
さて、このシリーズ今まで1日2本のペースで投稿してきましたが、本拠地pixivのストックが少なくなってきました。そのため、今後は1日1本の投稿に減らしたいと思います。
今はコンテストへの応募に力を入れており、pixivで新作が投稿ができていない状態なのです。
ランキングが下がるかも知れませんが、私はそういうものは気にしない性格なので、変わらず楽しく投稿できたらと思っています。
いつも夕方に投稿するようにしますので、変わらぬ応援をよろしくお願いいたします。
舞々より
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