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野良猫みたいな恋②

 大抵の人は、恋人の過去が気になると思う。  例えば、元カノや元カレの人数とか、経験人数とか……。ぶっちゃけ、そんな過去を今更気にしたって仕方ないと思う。だって過去は変えられないし、今、その人に愛されているのは自分だから。  そんなのわかってる、わかってるけど……めちゃくちゃ気になる。  成宮先生は(多分)真面目な人だから、彼の過去の悪い噂とかは聞いたことがない。  彼くらいモテる人なら、付き合いたいと思ってる人や、体の関係を持ちたい人なんて腐る程いるだろう。だから成宮先生さえその気になれば、そんな相手はすぐに見つかるはすだ。  だからこそ、俺は気になって仕方ない。  初めて成宮先生とセックスした時、男とするのなんて勿論初めてだったのに、あれよあれよという間に俺の体は彼を受け入れてしまった。  洋服を脱がされてキスをして、2人がイクまで実にスムーズに事は進んでいった。「滞りなく」というのはきっとこういうことを言うのだろう。その時に、 「ああ、この人は慣れてるんだな……」  って思った。  きっと、今まで何人もの人を抱いてきたんだろうな……って。  そんなのは面白くなんかない。面白くないに決まっているけど、「うるさい」って思われるのが怖くて、今まで何も聞けずにいた。 「葵、好きだ」  俺を熱っぽい瞳で見つめる成宮先生を、俺は信じることしかできない。  俺の経験人数なんて、片手で十分足りてしまう。 「どうか成宮先生の経験人数が、いくら軍艦に乗っている、いくらの数ですみますように……」  そう祈ることしかできない。  そんな中、その人は突然現れた。 「なに、この人……めちゃくちゃかっこいい……」  その人を見た瞬間、俺は言葉を失った。  瞳はパッチリしていて、綺麗な二重がその顔を涼やかに見せる。真っ白な雪のように綺麗な肌をしているのに、いやに色気のある唇は紅をさしたように赤い。  真っ黒の髪がサラサラと顔にかかり、その人の艶っぽさを更に引き立てていた。 「男の人だよね……」  俺は失礼とは思いながらも、その人の股間に思わず視線を移してしまった。  普段は男臭い小児科の医局に、ほんのり高級なお香の香りが漂った気がする。  「橘夏月(たちばなかづき)です。よろしくお願いします」  そうニッコリ微笑めば、何か光線が発射されたかのように眩しくて思わず目を覆いたくなった。  

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