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野良猫みたいな恋③

 橘と名乗った人物は先程まで可愛らしく見えていたのに、今は芸能人のようにかっこよく見えた。とにかく、イケメンなのだ。 「橘先生は成宮先生と同期で、つい最近までお父様が経営されている病院で働かれていたんだ。しかし、我が小児科病棟が危機的な医師不足との噂を聞きつけて、応援に来てくださった」  小山小児科部長が嬉しそうに満面の笑みを浮かべている。 「彼は小児科における心臓外科のスペシャリストだ。せっかくの機会だから、色々なことを学んで欲しい」  そう言いながら、医局の中にいる医師をグルッと見渡す。  俺は、そんなにも素晴らしい医師と一緒に働けることがことに感動していたから気づかなかった。  隣にいた成宮先生が、橘先生を見て眉を顰めていたことを。  あの時、そんな成宮先生に気が付いていたら、少しだけ未来が変わったかもしれない。 ◇◆◇◆ 「じゃあ橘先生は、お父様の病院に移られる前は、この病院で働いていたんですか?」 「うん、そうだよ。成宮と同期なんだけど、研修医が終わってからも何年か一緒に働いてたんだ」 「へぇ、そうなんですね」 「成宮が元気そうで良かった」  そう話す橘先生は大病院の御曹司という肩書きの割には、気さくで話しやすい人だった。  近くで見れば本当に容姿端麗で、可愛らしいのにかっこいい。それに、とても優しい話し方をしてくれる。  俺は、すぐに橘先生に惹かれてしまった。  医師としても、同じ男としても本当にかっこいい。大人の男の魅力に溢れた人だった。  来てそうそう、2件もの心臓カテーテル手術を終えた橘先生が、髪を掻き上げながら手術室から出てくる。 「あんなに難しいopeを2件も……凄い……」  その鮮やかさに感動してしまった。 「凄いですね、橘先生」 「あぁ、水瀬君。ありがとう」  手術を見学していた俺は、真っ先に橘先生に駆け寄った。  医療に関する技術だけでなく、人間的にも完璧な橘先生に俺はすっかり魅了されてしまっている。  こんな人間になりたい……心の底からそう思った。 「水瀬君は素直で可愛いなぁ」  少しだけ自分より背の高い橘先生を見上げれば、優しく頭を撫でてくれる。  そんな仕草も堪らなくかっこよかった。 「おい、水瀬。こっちに来い」 「え?」 「いいから来いよ」  橘先生に頭を撫でられご機嫌な俺は、一気に現実に引き戻される。いつの間にか近くにいた成宮先生に、グイッと腕を強く引かれた。  

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