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幸せのランタン①

 もうすぐハロウィンがやって来る。  病院の外来や待ち合い室もカボチャやお化けの飾り付けで賑わっていて、なんだかワクワクしてしまう。  俺が働いている小児科病棟は、入院している子供達にも季節のイベントを感じでもらおうと、七夕やクリスマス、ハロウィンていった特別な日にはかなり力を入れている。  入院しているからこそ、そういったイベントを楽しんで欲しいと思うから。 「水瀬先生!今年は本物のカボチャでランタンを作りますよ」 「本物のカボチャで?凄い!楽しそうですね」 「ちょっと難しいかもしれないから、子供達のお手伝いをしてあげてくださいね」 「わかりました。頑張ります!」  院内にある幼稚園の先生が、オレンジ色をした、大人の手の平に乗るくらい小さなカボチャをたくさん持ってきてくれた。 「これでランタンを作るのか……子供達、みんな喜ぶだろうなぁ」  普段、辛い治療を頑張っている子供達の喜ぶ顔が見られることが、嬉しくて仕方ない。 「ふふっ。楽しみ」  俺は小さなカボチャを、思わず抱きしめた。  ランタンを作る当日。  デイルームにはたくさんの子供と、付き添いの人が集まっていた。みんな看護師さんが準備してくれた仮装用の衣装に身を包み、すっかりハロウィン一色だ。  俺もせっかくだからと、ドラキュラの衣装に身を包み意気揚々とテーブルについた。 「先生めっちゃ張り切ってんじゃん」 「当たり前だろ。やるからには本気だよ」  俺は保護者が入院に付き添わなくてもいい、年の大きな子供達のテーブルに混ぜてもらう。  保護者がいないからこそ、一緒に作業をしてあげたいって思った。 「先生、仕事しないとまた成宮先生に怒られるよ?」 「そうだよ。こんなとこにいていいの?」 「大丈夫!ちゃんと仕事終わらせてきたから」  こうやって話ができる年齢の子供達は、友達みたいで、これはこれで楽しい。  そんな俺達のテーブルには、少しだけ大きなカボチャが配られた。 「よし、やるぞ!」  俺は気合いを入れてナイフを握り締めた。 「ふふっ。あのドラキュラ、メチャクチャ頑張ってんじゃん」 「本当にな。可愛いったらねぇよ」  妥協は決して許さない職人肌である俺は、夢中でカボチャに向き合った。必ず子供達に「凄い」と言われるランタンを作りたい……その一心だった。 『水瀬先生凄い!』  子供達から向けられる尊敬の眼差しが、目に浮かぶようだ。   それでも、俺がカボチャと格闘する姿なんて、まるで玩具を与えられて目をキラキラさせる子供みたいに見えるのだろう。確かに、誰よりも俺が張り切っていることは確かだ。  少し離れた場所で、成宮先生と橘先生がそんな俺を楽しそうな顔をしながら見ているのがわかる。  でも、今はそんなの関係なかった。  

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