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幸せのランタン②

「あんなカボチャ1つに、あんなにも真剣になるなんて……本当に子供みたいだね」 「そう。それが葵のいいとこなんだよ。子供みたいに純粋で、何にでも全力でぶつかっていって……本当に可愛い」 「はいはい。ご馳走様です。盛大に惚気けやがって……」 「あぁ……マジで可愛いなぁ……」 「ん?水瀬君のこと?それとも子供達?」 「水瀬だよ。本当に可愛い。寂しい時や悲しい時、苦しい時や辛い時。いつもあの子供みたいな可愛らしさや、純粋さに救われてきたんだ」 「はっ?お前、元カレ相手に惚気けてんの?」 「ふふっ。そうだよ。だって何年一緒にいても飽きることなんてないし、寧ろ、好きっていう思いが強くなる一方で……。さすがの俺ですら、戸惑いを感じることさえあるんだから。これ以上好きになることなんてない。その限界を、意図も簡単に突破させられてしまう。そう、怖くなるくらいに……。こんな情けない男なんだから、せめて惚気けさせてよ」 「はいはい。胸焼けがするからもうやめろよな。それより回診行くぞ」 「了解」  成宮先生が、橘先生とそんな話をしていたなんて露知らず……俺はランタン作りに夢中になっていた。  みんなで一生懸命作ったランタンの中には小さな蝋燭が置かれ、火を付けるとユラユラと揺れて。とても幻想的な雰囲気だった。  デイルームの棚に置かれたランタンを見ると、とても幸せな気持ちになれる。俺は暇を見つけてはランタンを眺めた。  それでも、みんなで頑張って作ったランタンは数日後には腐ってしまって……。それはまるで、魔界へとカボチャが帰ってしまったように感じられた。 「なんだか寂しいな」 「葵……」 「みんなで頑張って作ったのに。腐らないカボチャってないんですかね」 「お前は本当に子供だな」  子供みたいに唇を尖らせる俺の頭を、苦笑いしながら成宮先生が撫でてくれた。 🎃 🎃 🎃 ピンポーン。  珍しく2人の休みが重なった午後。まったりとリビングでくつろいでいた時に、インターフォンが静かな室内に響き渡った。  その時俺は、ソファーの上でお気に入りの毛布に包まってウトウトしていたけど……一気に現実に引き戻さられる。 「お、来たか……」  成宮先生が嬉しそうに目を瞬かせながら、玄関へと向かって行く。  Amazonが届けてくれたのは、小さな箱だった。 「千歳さん、それなんですか?」 「ん?秘密。夜になったら教えてあげるよ」  成宮先生がまるで悪戯っ子のようにクスクスと笑った。    

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