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幸せのランタン③

 夜になってもAmazonから届いた箱の中身を教えてくれない成宮先生。それどころか、そんなことなど忘れてしまったかのようにパソコンを真剣な表情で見つめている。  今日1日そんな感じだったから、よほど大切な資料か書類を作っているのかもしれない。 「千歳さん、先に寝ますね」 「あ、うん。おやすみ」  お風呂から出てもまだ仕事をしている成宮先生を邪魔しないように、そっと声をかけてから寝室に向かう。  最近、美容院になんて行っていなかいから伸びきった髪からポタポタと雫が垂れる。でもドライヤーなんてめんどくさい俺は、タオルでクシャクシャと髪を拭いて布団に潜り込んだ。 「少しくらいイチャイチャしたかったな……」  ポツリ呟いて目を閉じれば、温かな布団に包まれて一気に眠気が襲ってくる。 「千歳さん、おやすみなさい」  そう囁いて、俺は千歳さんの匂いがする彼の枕を抱き締めた。 🎃 🎃 🎃 「葵、寝ちゃったの?せっかくプレゼントがあるのに……」 「ん、んん……ッ」  少しだけまだ湿った俺の髪を優しく撫でてくれる感覚に、重たい瞼をそっと開く。でも、まだ眠たい。 「葵、髪伸びたな?このまま髪伸ばしてよ」 「……ん……?なんでですか?」 「だって、馬鹿みたいにエロくてムラムラするから」 「ふふっ。なんですか、それ?」 「俺、エロい子が好きなんだもん」  大きな手が髪を優しく掻き上げてくれて……首筋に唇を寄せられると、擽っかだりの俺は「んッ」と甘い声を上げならがら、体に力を込めた。 「本当に可愛いい」  俺を見て、まるで王様のように不敵な笑みを浮かべる成宮先生を見れば、満足感で満たされる。  ……ああ、やっぱり俺はこの人が好きだ。  何年たっても、その想いは変わらない。  もう何度か一緒に過ごしたハロウィン。来年も、また一緒に迎えらると疑って止まない。  来年も再来年も、そのまた次の年も、ずっとずっとそれは変わることなんてないはずだ。 「なぁ、葵……trick or treat……起きないと、悪戯しちゃうよ」  ツンツンとぷにぷにした頬をつつかれて、重たい瞼をようやく開けば……愛しい人と視線が絡み合う。 「やぁだ……」 「ふふ。可愛い」 「ねぇ、仕事終わりましたか?」 「あと少しってとこ。まだ眠い?」 「はい。少しだけ眠いです」 「そっか……」  まだ寝ぼけ眼の俺の髪を優しく撫でてくれる。その温かくて大きな手が気持ちよくて、思わず目を細めた。 「布団に入れて」 「はい」  成宮先生が毛布の中にに入り込んでくれば、ベッドが少しだけ狭くなる。俺は成宮先生の上に体を預ける感じでそっと寄り添った。温かな成宮先生と布団に包まれて、思わず「ふふっ」と頬が緩んでしまう。  こうやって触れ合っていても心地いい……って感じられる季節になったことが嬉しくて仕方ない。 「千歳さん、あったかくて気持ちいい」 「そっか……」  そんな俺を優しく抱き締め返してくれた。  最近、いつも忙しい成宮先生となかなか一緒にいることができないから、こうやって傍にきてくれた時には受け止めてあげよう……そう決めていた。  せめて、恋人の羽を休める場所でありたいから。 「これ、葵にあげる」 「え?なんだろう」 「ハロウィンだからさ、少しでも雰囲気出ればなって思って」  少しだけ照れたような顔をしながら、きっと日中届いたであろう小さな箱を手渡してくる。  ドキドキしながら箱を開けた瞬間、まるでひまわりの種を見つけたハムスターのように目を輝かせてしまった。

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