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クリスマスに浮気をします③
今日は雪が降るって、天気予報が言ってた。
成宮先生がくれた毛糸の帽子を、目深に被る。帽子はやっぱり柔らかくて、凄くあったかい。
また溜め息をつけば、白い息が空高く上っていき……見えなくなった。
最近の成宮はイライラしている。
成宮先生はたくさんの人の期待を背負っているから、誰よりも大変なのはわかってる。人前では仏様の仮面を被っているから、イライラをぶつける相手が俺しかいないって事も……。俺だからこそ、心の奥底のドロドロした部分までさらけ出してくれるんだ。
そんなん、理解しきってる。
それに最近は、成宮先生の性欲処理のためだけに傍にいる気もする。恋人との甘い時間……と言うより、ただの排泄作業。
普段は素っ気ないくせに、やりたいときだけ甘えてくる。それも仕方ないかな……って好きにさせてやれば、実に自分勝手なセックスをしてくれる。
床や壁に力一杯押し付けられ、痛いくらいに愛撫されて。俺が泣くまでねっちこく弄くり回され、玩具にされてしまうんだ。
その、自分本意の行為は、苦痛そのもので….…。どうにか避けて通りたいのに、もともと性欲の強い成宮先生に、結局はいいようにされてしまう。
今日、久しぶりに成宮先生から『今日は早く帰る』ってLINEがきた。でもわかってる。
『帰りたい』んじゃなくて、『やりたい』んだって。
玄関の扉が開けば、
「葵」
って甘く囁きながら、強く抱き締めてくれる。
「ベッドに行こう?」
手を引かれたから、素直にそれに従った。
数時間後、ようやく成宮先生から解放される。加減なんて全くしてもらえないから、体はボロボロで。
「痛ぇ……」
身体中に残る、成宮先生の噛み跡に氷枕を押し当てる。キスマークなんて可愛いもんじゃない。歯形そのものだ。
行為の最中はやけにテンションが高かったから、歯止めが効かなかったのかもしれない。
知らぬ間に変わってしまった恋人を目の当たりすれば、心が締め付けられる。俺はいたたまれなくなって、そっとベッドを抜け出した。一緒にいるのが辛かったから。エアコンの効いていないリビングは寒くて、思わず膝を抱えてずくまった。
けど、成宮先生からもらった毛糸の帽子は手放せない……俺もいい加減バカだなって思う。
慌ただしく月日は流れ、もうすぐ一年が終わろとしていた。
今日はクリスマスイヴ。成宮先生の誕生日だ。
成宮先生と、久しぶりに二人でゆっくり過ごそうか……なんて約束していた日でもある。
気づけば、毎日業務に追われる日々で。立ち止まる暇すらなかった。本当にすれ違いの毎日だ。話すらまともにしてなったことに気づかされる。
だからこそ、二人きりで過ごせるなんて……正直凄く嬉しかった。
「たまには二人でどかに行こうか?」
照れたように笑う成宮先生を、久しぶりに見たような気がした。
「だって、もうすぐクリスマスじゃん?」
「あっ、そうだ……クリスマスですね」
忙しすぎて、今日が何月何日なのかもわからなくなっていた。
小児科病棟に綺麗に飾り付けられたクリスマスの飾り付けに、そろそろクリスマスが近いことを思い出すくらいだ。
きっとゆっくり街並みを見渡せば、綺麗なイルミネーションが輝いていることだろう。毎年病棟で行われるクリスマス会が、楽しみになってきた。
医局の前に着いて大きく息を吐く。
今日は12月24日……成宮先生、クリスマスイヴです。それから、あなたの誕生日でもある。プレゼントを準備する時間がなかったから、これから出掛けたついでに2人で選ぼうと思う。
たまには、笑った成宮先生が見たい。最近はずっと余裕のない顔しか見てないから。
どうか、成宮先生が笑ってますように……。
祈るような気持ちで医局のドアを開けた。
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