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クリスマスに浮気をします⑨

「俺が一番欲しい物を、誕生日にちょうだい?」 「……千歳さんは何が欲しいんですか?」 「俺は……俺が欲しいのは」  俺をギュッと抱き締めてくれた。 「俺が一番欲しいのは葵だ。だから、葵を俺にちょうだい?」 「バカですね……」  思わず頬が緩んでしまう。 「俺は、あなたを好きになった瞬間から、あなただけの物ですよ」 「そっか、ありがとう」 そう照れ臭そうにはにかんだ後、優しい優しいキスをくれた。 そのキスは生クリームみたいに甘くて……気持ちよくて。離れて行ってしまった成宮先生の唇が恋しくて。 「もっとキスして」  っておねだりしたら、 「お前は本当に可愛いいな」  なんて笑ってた。 雪は止むどころかどんどん積もっていき……公園を白銀の世界へと変えて行く。 「帰ろ?」 「はい」  成宮先生が差し出してくれた手に、勢いよく絡み付く。 「葵、大好きだ」  って笑ってくれた。 俺の大好きな笑顔で。嬉しくて、幸せで……体は震えるほど寒いのに、心がポカポカ温かくなった。 「なぁ、お前あのまま俺が来なかったら、あいつと浮気してたの?」 「はい、多分してました」 「はぁ!? なんでだよ!?」 「それが案外イケメンだったんです。抱かれてもいいな、って思えたんですよ」 「あーおーいー!!」 「ふふっ。自業自得ですよ……なんて、浮気するつもりなんて全然ありませんでした。ただ、あなたを試してみたかった……俺も最低なんです。ごめんなさい。」 静まり返った聖夜に、成宮先生の叫び声が響き渡った。 俺は、恋人の誕生日であるクリスマスに、浮気をしようと思ってました。 でも結局はできなかった。ううん、させてもらえなかった。だってあなたは、どんな方法を使ってでも、俺の浮気を阻止したでしょう? そんなんわかりきってた。結局は、あなたも俺にベタ惚れなんですよ。 「葵、ケーキ買って帰ろう?」 「俺、苺のショートケーキがいいな」 「はぁ!? チョコレートケーキだろ?」 「えぇ! ショートケーキですよ!?」 「チョコレートケーキ!?」 もう長いこと付き合ってるくせに、全然気が合わない俺達……思わず笑ってしまった。 「その毛糸の帽子。凄く似合ってる」  突然成宮先生が嬉しそうに笑う。 「メチャクチャ可愛い」 そんな笑顔を見れば、やっぱり成宮先生が大好きで……どんなに酷い扱いを受けたって、嫌いになれるはずなんかない。 二人でショートケーキをワンホール買って、吐く直前まで頑張って食べた。 それから、久しぶりに優しく成宮先生に抱かれた。その、真綿に包まれたような優しい扱いに、逆に照れ臭くなってしまう。 「葵、気持ちいい?」 「気持ちいい……千歳さん、大好き」  ギュッと抱き合えば、甘いクリスマスに絆されて……2人で蕩けてしまいそうだ。  優しく後孔を解されて……「もうちょうだい?」とねだるまで、可愛がってもらって。  熱い熱い成宮先生を受け入れた瞬間、あまりの快感に全身が甘く痺れた。緩やかに体を揺さぶられながらお腹の中を擦られて……体の芯から火照り出す。 「あ、あぁ……はぁ……気持ちいい……」 「気持ちいい? よかった」 「はい……もっと、もっと奥を突いて……ねぇ、足りない……」 「可愛いな、葵」  奥深くを突き上げられて、体を捩って酔いしれた。  俺の気持ちいところも全て知り尽くした相手だから、簡単に絶頂へと追いやられてしまう。ただ気持ちいい世界に突き落とされる感覚。 「あぁ、今日は寝かせてもらえそうもないな……」  そう頭の片隅で思う。ならば……。 「もっと、もっと強く……まだ足りない……」 「馬鹿、あんまり煽るな」  成宮先生の首に腕を回し、自分からその唇を貪る。  もう気持ちよすぎて、成宮先生が好き過ぎて……意味がわからない。 聖なる夜に、大好きな人と結ばれる喜びを、実感する。 あんなに軽く見ていたクリスマスに、すっかり酔いしれてしまった。 12月25日。 朝目覚めると、枕元にまたプレゼントの包みが……それを手に取って、首を傾げていれば、成宮先生が照れ臭そうに笑った。 「朝方さ、サンタクロースがごめんねって、葵にだけ特別にプレゼントもう一つくれたんだよ」  鼻の頭をポリポリと掻いている。 「やっぱりサンタクロースっているんですね」 「いるよ。葵専属のな?」 「ありがとう。サンタさん」 悪戯っぽく笑って見せれば、顔を真っ赤にして目を泳がせていた。 でも困ったな、俺はプレゼント用意してない。きっと千歳さんは、『気にすんな』って言ってくれるだろうけど……。 それじゃ、俺の気が済まないよ。 隣にいる成宮先生を、そっとベッドの上に押し倒す。その逞しく鍛え上げられた体に馬乗りになり、股間を押し付けた。 「もう一回、しませんか?」 今日は、いっぱいいっぱい甘えさせてあげたいと思う。 それに、今日だけでも素直に甘えようとも思った。 「千歳さん、お誕生日おめでとう。それから、メリークリスマス」 甘く甘く囁いた。 【クリスマスに浮気をします END】

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