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ずっとずっと一緒だよ③
「なぁ、帰ったら『姫はじめ』でもするか?」
「ん?」
成宮先生が珍しく少し照れたように俺の顔を覗き込んできたけど、いまいち言っている意味がわからず、首を傾げてしまった。
姫はじめ……?
きっとお正月にする重要な儀式なのだろうと、少し気が引き締まる思いがする。きっと、成宮家のような由緒正しい上流家庭の人間がやることなのかもしれない。
「はい、わかりました。俺そういったお正月の知識がないので、色々教えてください」
これだから貧乏人は……そう思われるのが嫌だったから、背筋を伸ばして成宮先生向かって深々と頭を下げた。
「え? 葵、お前、姫はじめ知らないのか?」
「はい。知らないです……無知ですみません。でも、俺も頑張って姫はじめしますから!」
「マジか……」
思わず俯いてしまった俺を見ながら、成宮先生が髪を掻き毟っている。
「なんか、変なことを言ってしまった罪悪感が半端ないんだけど……」
「はい?」
「いいいい、なんでもない!」
「え? でも俺も姫はじめしてみたい……」
「本当にごめん。俺が悪かったから少し黙ってて」
顔を真っ赤にした成宮先生に、再び唇を奪われてしまう。
でも俺は、こうやって年を重ねていけたらいいな……って思うんです。
ずっとずっとこうやって、ずっと一生にいようね……。
🎍 🎍 🎍
当直が明けて、クタクタになりながらも2人で家路につく。
途中で寄った、病院の近くになる神社で初詣をして……おみくじを引いたら俺は大凶だった。もちろん神の子である成宮先生は当然のように大吉だ。でも、そんなことだって楽しくて仕方ない。
大凶だって構わない。今の俺は、大凶を引いて丁度いいくらいの幸せ者なんだから。
人気のないところで手を繋いで、心と体がポカポカして温かい。
家に帰った頃にはお腹がペコペコだったから、成宮先生に作ってもらったおせち料理を頬張った。
「うまぁい! 伊達巻も厚焼き玉子も煮豆も!」
「そっか、よかったな。たくさん食いな?」
「はい!」
成宮先生は俺の頭を、相変わらず優しい手付きで撫でてくれる。
そんな成宮先生も幸せそうで嬉しくなってしまった。
「葵……」
お風呂に入った後、成宮先生に背中から抱き締めらてそっと耳打ちされる。
「あのな葵、姫はじめっていうのはな……」
その言葉を聞いた瞬間、俺の頬が一瞬で真っ赤になってしまった。
姫はじめって、そういう意味だったんだ……。
胸がドキドキして体が熱くなる。
「葵、姫はじめ、するか……」
「…………」
「しよう?」
「はい……したい……お願い、抱いて……」
「ふふっ。可愛い」
千歳さん、明けましておめでとうございます。
2024年も、ずっとずっと一緒だよ。
【ずっとずっと一緒だよ END】
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