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飴玉みたいに甘い恋②
けどその瞬間は突然訪れた。
「葵……」
2人きりでリビングでゴロゴロしてた時、突然名前を呼ばれてキスされた。キスが終われば離れて行くだろう、気楽に構えていたのに、ねちっこいキスはなかなか終わりを迎えなくて。
舌を絡めとられて、口内を成宮先生の熱い舌が這い回る感覚に、意識が段々遠退いていく。
「葵、葵……」
切ない声で俺を呼ぶ成宮先生を見れば、その瞳の中には性に飢えた獣がいて。この人も男だったんだって思い知らされた。
「俺は葵を抱きたいんだ…」
どこか苦しそうに呟くその姿を目の当たりにして、成宮先生がずっと俺とそういった関係になりたいのを我慢してくれていたのが痛いくらいわかった。
なのに、そんなこと全く考えていなかった俺。
そしてその時突きつけられた現実。
――あ、俺が抱かれるほうなんだ。
そう言われてみれば、バレンタインには成宮先生にチョコをねだられチョコをあげたっけ。
咄嗟に血の気が引いていくのを感じた。
だって明らかに抱かれる側のリスクのほうが、圧倒的に高い行為なのはわかりきっていることだから。
男同士なんだから、ぶっちゃけどっちがどっちの役をやっても問題ない。なのに、いつの間にか成宮先生の中では出来上がっていた役割分担に正直戸惑う。
向こうは立派な狼。そして自分はちんけな鼠。誰が見てもわかりきっている俺達の上下関係。
なんだよ、この格差社会……。
全身が恐怖と不安から震える。
かと言って、「じゃあ、葵が俺を抱いてよ」って言われたところで、男を抱く方法もわかりゃしない。
大人しく、愛しい恋人の為に猫に成り下がることを覚悟した瞬間でもあった。
覚悟を決めたはずなのに、何もかもにいちいち戸惑ってしまう。だって、そもそもが今まで経験してきたことと真逆だから。
今までは、自分が彼女を見下ろしてきたのに、今の俺の視線の先には成宮先生がいて、その先には天井がある。
今までは、彼女を気持ち良くさせたいって頑張ってきたのに、今は相手が俺を気持ち良くさせようと頑張ってる。寝てるだけで何をしていいかわからなくて……目をギュッと閉じるしか方法が見つからなかった。
全てが受け身で、どうしたらいいのかわからなくて泣きたくなる。
これじゃ、本当に自分が女の子になったみたいだ。
元々プライドは高いほうじゃないのに、そんな俺のちっぽけなプライドが悲鳴を上げる。
――俺は男だ!!って。
成宮先生から与えられる快感に身を捩らせ、それでも快感に飲み込まれないように歯を食い縛る。
そして、ずっとずっと抱いていた不安。
成宮先生はこんな俺の体に欲情するんだろうか。
はじめてはみたものの、「やっぱ勃たないわ」ってなったらどうしよう……って怖くて仕方ない。
成宮先生の腕の中で、静かに、けど精一杯葛藤を続ける猫の気持ちなんか、成宮先生には絶対届かない。
やっぱり泣きたくなった。
「葵、足、開いて?」
「へ?」
突然両足を担ぎ上げられ、秘部を成宮先生の目の前にさらけ出される。
「やぁッッ!!」
自然と漏れる悲鳴。こんな格好本当に女の子じゃん。
俺の股の間に割って入ってきた成宮先生の熱いものが秘部に押し当てられて。そのあまりの熱さと、硬さに体が飛び跳ねる。
それと同時に安堵した。良かった……成宮先生が興奮してくれてて。
「痛かったら言って? お前初めてだから、上手くできないかもしれねぇ。傷つけないように気をつけるから」
その時気付く。成宮先生の体が小刻みに震えていることを。
成宮先生も不安だったんだ。そんなことにも気付けなかった自分が情けなくなった。
ちっぽけな猫は、自分のことしか考えられなくて。
あの神様みたいな人が、こんなに弱みを見せるなんて……自分は愛されてるんだって思った。
女の子みたいだから、なんてプライドなんか必要ない。
俺が男としての、こんなちっぽけな意地やプライドを捨てることで成宮先生と愛し合えるなら……俺は喜んでプライドなんか捨ててやる。
俺は自ら股を大きく開いて、まだなお震える成宮先生を包み込んだ。
成宮先生、俺はあなたの猫になりたい。
あなたの為に、可愛い可愛い猫になるから。
どうか俺を愛して欲しい。
俺、あなたの為なら何でもできるから……。
どうぞ、あなたのお気に召すままに。
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