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エイプリルフールの化かし合い②
成宮先生が葵君に「別れよう」と嘘をついたら
時には、『超』がつく程完璧な彼氏も、恋人を試したいと思う時があるのだろうか?
いや、あの自尊感情がエベレストより高い成宮千歳が、狸のような俺を相手に不安になることなんて、きっと地球が滅亡してもないだろう。
だからきっと、いつもみたいに俺をからかって、面白がってるだけだ。
「葵、別れよう」
「え?」
「だから別れようって言ってんの」
「はい? きゅ、急に、な、何でですか?」
「わかんないけど……飽きた?」
「へ……?」
まるで、「夕飯何食べる?」的なノリで、突然別れを切り出されてしまった。
それは正に青天の霹靂で……予想もしていなかったことだった。でも、いつか、こんな日がくることは覚悟してはいたんだ。
だって、あんな綺麗な狐に、こんなずんぐりむっくりの狸が永遠に愛されているはずなんかない。
わかってた、そんなこと。
でも、あまりにも急過ぎるだろう……。
これは、完全なるGAME OVER。
「嘘だ……」
いくら覚悟していたって、やっぱり心に受けるダメージは隠しきれない。
目の前が真っ暗になって、呼吸が苦しい。フラフラと目眩がして、今にも崩れ落ちそうになる体を必死に支えた。
「冗談、冗談だよ。ほら葵、今日はエイプリルフールだから……」
「嘘だ……絶対に嫌だ! 嫌だぁ!!」
「あ、葵!! 待てって!!」
もうこの時には、成宮先生の声なんか届いていない俺は、リビングから一目散に走り出す。
でも、この家を飛び出しても行く場所なんかない俺は、寝室のクローゼットの中に飛び込んだ。
「情けない。フラれた挙句に、クローゼットに逃げ込むなんて……この家を出てかなきゃいけないのに……」
鼻の奥がツンとなって、目頭が熱くなる。
俺は、涙が溢れ出してくるのを、必死に我慢した。
「葵、葵……」
クローゼットの扉をコンコンと、優しく叩く音が聞こえてくる。俺は、体を硬くしてクローゼットの扉の前に蹲った。
「葵、ごめんな」
「謝らないでください……心変わりなんて、仕方のないことです」
「違う、違うんだ。俺は心変わりなんてしてない。ただ、今日はエープリルフールだから、葵を構ってみたかったんだ」
「え?じゃあ、別れようっていうのは……」
「全部冗談だ」
「そんな……酷い。あんまりだ……」
俺は、自分の膝に顔を埋める。
こんな冗談、笑って許せるはずなんかない。
「だから、ごめんって」
あの成宮千歳が謝罪するなんて、本当に気持ち悪いけど、今回は100%成宮先生が悪いって思う。
だから、簡単に許してなんかやらない。
「葵……」
クローゼットの扉を挟んだ向こう側で、成宮先生の気配を感じる。
普段怒らない俺が怒ったものだから、きっと困ってるんだろう。ううん、もっともっと困ればいいんだ。
だって僕は、成宮先生の玩具じゃないんだから。
「なぁ葵……キスしてやるから、出ておいで?」
「…………」
「ギュッと抱き締めて、いい子いい子しながらキスしてあげる」
「…………」
「そしたら、葵の可愛い乳首にもキスしなきゃな?お前は感じやすいから、直ぐに乳首が綺麗なピンク色に染まって、硬く尖るんだ」
「え……?」
「硬く尖った乳首を指で可愛がってほしい?それとも、舌で舐めてやろうか?」
「…………うッ♡」
そんな成宮先生の甘い囁きを聞いただけで、胸の突起が甘く疼くのを感じる。
「その次は、トロトロと蜜が溢れ出してきてる葵自身を口に咥えながら、葵の中を指で掻き回してあげる」
「ん、ん……♡」
「葵の気持ちいいとこを見つけて、そこを葵が泣くまで虐めてあげるよ」
「やだ、やだぁ……♡」
「最後は、俺が葵の中に入って、1番奥までガンガン突いてやる。あと、葵の好きなとこも擦ってやらないとな」
「あッ♡ もう、やめて……♡」
「泣くまで、大事に抱き潰してやるよ」
もう俺は、成宮先生の声に犯されてるみたいだった。
体は熱く火照り出し、お腹の奥がキュンキュンと切なく疼く。俺の体は、触れられてもいないのに、グズグズに蕩けてしまった。
「だから、出てこい。葵……扉を開けるよ」
背中にあった扉がゆっくり開いて、眩しい寝室の明かりが、クローゼットの中に差し込んでくる。
「葵、出ておいで」
「千歳さん」
俺は、夢中で成宮先生に抱きついた。そんな俺を、成宮先生はギュッと抱き締め返してくれた。
「もう、別れるなんて絶対に言わないで……」
「うん、わかった」
「あ♡ むぅ♡」
俺の顔を覗き込んでから、チュウッと優しいキスをくれた。
「お詫びに、心を込めて抱かせて頂きます」
「もう、駄目♡ これだけでイキそう♡」
「イケよ。葵のお気に召すままに♡」
【エイプリルフールの化かし合い END】
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