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「なに、そんなしょんぼりとした顔をしているんだよ。朱音は赤点じゃなかったじゃん」
「いや、別に··········」
「俺なんて見ろよ! カンペキに赤点なんだぞ!」
ずいっと大野の解答用紙を見せつけられ、点数を見てみると、「うわ、マジ·····?」と言葉が漏れた。
「ガチの反応してくれるじゃん。ヘコむわ〜」
「わりぃ」
「っていうのは半分冗談だけどさ、期末前に補習するのがダルすぎる〜」
「ドンマイ〜」
「クソっ、余裕ぶっこきやがって!」
半ばじゃれ合い、半分本気のパンチをしかけ、手で受け止める。
「おう、大野と朝田! テストの結果どうだったよ?」
「俺は、赤点! 朱音は赤点じゃねーんだわ」
「は? マジ? 俺も赤点なのに? 裏切り者じゃん」
「なんで、後々めんどくせぇ補習の仲間にならなきゃいけねーんだよ」
「類は友を呼ぶって言うじゃん? だから、よく一緒にいるやつら全員そうなのかと思っていたからさ。マジないわ〜」
やってきた友人は大野の肩を組むなり、わざとらしいため息を吐き、その息が顔にかかったこともあり、眉を潜めた。
「朝田なんて、授業聞いてなさそうじゃん。で、後になって慌てて黒板のを写そうとしてるけど消されてさ。結果、誰かに見せてもらっているのがほとんどじゃん」
「めっちゃ見てるのかよ。キモ・・・・・」
「人間観察が趣味なんよ〜。授業中、授業と関係ないことをしているヤツらが意外と多くてさ。それ見るの意外とおもしれーよ?」
「んなことをしているから、赤点になるんじゃないのか?」
「言うね、朝田。そうなんだよ。けどな、一回面白いことを見つけると、止められなくなるんだよ・・・・・」
「キメているやつのセリフじゃん。やば」
女子のように口元を両手で覆い、仰け反ってみせると、「朝田くぅん、君もこっちにおいでよ〜」と両手をゾンビのように差し出し、上下に振る仕草をする。
「おい、こら。まだ授業中なんだぞ。席に戻れ」
「「はぁい」」
三人同時に間の抜けた返事をすると、先生の言うことをとりあえず聞いた二人は、「話はまだだからな」と言い残して席へと戻っていく。
「まだ話し足りないのかよ」
ボソッと呟き、「赤点のやつは期末前に放課後残れよ」と言い、答え合わせする先生の話を何となく聞きながら、改めて解答用紙を見やる。
知らぬ間に頬を緩めていたことに、本当、どんだけ嬉しいと思っているんだがと苦笑する。
けれども。本当に良かった。
紫音は三年であるから、色々と忙しいというのに、それでも教えてくれた。だから、せめて今すぐにでも紫音にお礼をしに行きたい。
そうしたら、褒めて、頭を撫でてくれるのだろうか。
「なわけないか」
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