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「・・・・・話は、それで終わりか?」
スっと立ち上がった紫音が、淡々と言った。
抑揚のない口調であったが、怒っているような雰囲気でもない。
「しおんにぃ、・・・・・あ、紫音。何か用が──」
言葉が途切れた。
と言うのも、振り返り、立ち去ろうとした紫音が、朱音の頭に手を置いたからだ。
え、と口の中で呟いた。
何の前触れもない時であったため、一瞬、何をしているのかと目を瞠った。
紫音が、朱音の頭に、手を。
なんで。
疑問符を浮かべた後、すぐさま頭から手が離れ、去っていく足音が背後から聞こえた。
「え、あ、えっ?」
振り返り、どうしてこんなことをしたのかと問おうとしたものの、言葉が絡まり、言いたいことが言えず、そのうち紫音の姿がなくなった。
「え、えぇー・・・・・」
真っ白になりかけた頭の中で、必死になり、自身の言葉を振り返った。
来たのは、紫音に会いたいからと言ったこと。
テスト結果を見せてお礼を言ったこと。
そして、紫音に教えてもらっている時、昔、紫音の真似事をして、ひらがな練習で褒められて・・・・・。
「あっ!」
頭を撫でれられたのがとても嬉しかったことを言ったから、してくれたのか。
「けどさ、急にやるのは反則だよ、しおんにぃ〜・・・・・」
熱くなる顔を両手で覆った。
何顔を真っ赤にしているんだと、自分で突っ込んでいたが、この際そんなことを気にしている場合ではない。
再開した紫音は昔のような優しさは微塵もなく、話しかけにくい雰囲気を纏わせていたものだから、昔のように撫でた、とまではいかないものの、頭に手を置いてくれたのが今でも信じられないぐらい驚いている。 その手を置いていたのは僅かな時間であったが、朱音にとっては長く感じた。
置かれた手の感覚がまだ残っている。
しようとして、しなかったことが残念だと思っていたが。
「もう、わけ分かんねー・・・・・」
その呟きは誰かに聞こえるわけもなく、地面に溶け込んだのであった。
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