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「しおんにぃも自分で働きたいのかな!?」 「··········は?」 「だって、俺と比べものにならないぐらい、勉強でも何でもかんでも出来る人が、大学行かないなんて言っていたんだぜ? なんでなのかなって。目標がないとか?」 「あー? あー··········。目標がないってのも理由の一つかもしれないが、経済的な面?」 「経済的な面、か·····」 あまりにも小さい頃であったので、紫音の家のそういった事情は知らない。が、前に見た記事に『両親とも音楽家』と書いてあったので、朝田家とは比にならない金持ちと思われる。 だから、経済的な面とは思わないが、会ってない間に紫音の両親が離婚をしてたりと、状況が変わっている可能性も否めない。 そういう理由なのだろうか。 「紫音先輩は三年だから、もう決めてないといけないけどさ、俺らもそろそろ決めないといけないよな」 「はー·····そうだよな。めんど」 先週、一年で初めての進路調査表をもらった。 1年なのに早すぎやしないかと思ったが、高校は三年しかなく、あっという間に卒業を迎えるから、高校に入った時点で考えないといけない、と心の声が聞こえたのかと思うぐらい、担任がそう言っていた。 人によってはそもそも高校を決める時点で、将来を決めているようなものであるので、将来も特に決めてなく、低い学力なので選択肢が少なく、さらには適当に決めた朱音にとっては、他人事のようだった。 「今週中に出さないといけないんだっけ?」 「今週って、いつよ?」 「いつだっけ? 明日? あさって?」 「覚えてないとか、考える気ないじゃん」 「そういう大野だって全く覚えてねーじゃん」 「俺はいいんだよ。俺は。どうせ、就職しか考えてないし」 「適当だな」 水溜まりにわざとらしく入った大野は、蹴り上げた。 バシャーン! 水しぶきを上げて、前方を濡らしていく。──とはいえ、雨が降っているものだから、すでに濡れてはいるが。 しかし、その光景がさっき見た夢で、自身がした行動と重なった。 途端、身体の底から、したいとウズウズした気持ちが止まらない。 そう思っているうちに、片足を静かに入れ、小さな波紋が靴から広がっていくのを見た後、もう片足も水溜まりに入れる。 そうした後、左足を軸に、右足を後ろに引くと思いきり蹴り上げた。 バシャーン! 高く蹴り上げた靴先から水が弾け飛び、さらには思っていたよりも、大野より遠くに行ったらしい、朱音より先に歩いていた人を濡らす形になってしまった。

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