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さっきので誤魔化しきれていなかったらしい、返す言葉がなく、詰まった。 理由を正直に言ったら、とてつもなく気まずい空気になるし、しかも、本人の前だ。これから一緒に帰ろうとしているのに、さらに口を利いてもらえなくなるだろう。 だから、さっきのことは掘り返さないで欲しい。 とは言えども、無理やり話題を変えるのも不自然すぎる。何か得策はないのか。 素直に、いや、口封じにアイスを奢るしかないのか。 と、その時、扉が開き、二人の男子学生が何やら騒ぎながら入ってくる。 「いや、お前の進路、おかしすぎだろ」 「おかしすぎ? 言うね、優。どの辺がおかしいっていうんだよ」 「サーカスに憧れるってのは、まだ百歩譲ろう。だが、何で動物の方にいくんだよ。お前、人間じゃないのか?」 「今は人間として産まれたかもしれないが、俺は前世ライオンだったかもしれねぇ⋯⋯! 火の輪潜りがめっちゃやりたくてウズウズしてやがる!」 「はいはい」 「なんだしその適当な返事は! 優なんて学校の先生って書いてなかったか?」 「至極真っ当な進路だろ。秀。お前もそのぐらい普通な進路を書け。先生にはたかれるぞ」 朱音らのいるドア付近とは反対側に立って会話する同年代の男子学生らのせいで、頭の中がサーカス? 人間がライオンがしている芸をするって? という疑問符だらけとなり、考える気力がすっかり失っていた。 しかも、大野は吹き出す始末。 「やばい。それ見てみたいわ」 やばいを連発しながら、電車内であるのを気にせず、腹を抱えて笑っていた。 さすがにその笑い声で自分らが言われているのだと思ったらしい、「なんか、すみません。こんなやつのとんでもなくくだらないことを聞かせてしまったばかりに」と、見た目は好青年そうな学生の方がこちらに謝ってきたのを、ツボに入った大野の代わりに軽く頭を下げた。 その時、その学生の制服を見た時、首を傾げた。 どこかで見たような。 「なあ、しおんにぃ⋯⋯紫音。あの学校って⋯⋯」 「⋯⋯あれは、うちの学校より偏差値が20以上ある進学校だ」 「頭、良っ!!」 大野に話しかけられなさそうだと思い、紫音に訊いてみたが、答えてくれた嬉しさよりも、目の前の学生の頭の良さに非常に驚いてしまった。 紫音が続けざまに教えてくれたのは、甲子園では常連で優勝するのが当たり前なぐらい強く、吹奏楽部を始め、様々な文化部も優秀な成績を収めているという、文武両道な学校だという。 うちのような、ようやっと甲子園に行けたことに喜んでいる学校とは全く違うようだ。 しかし、そのような素晴らしい学校の生徒が、こちらの学校の生徒となんら変わらないしょうもない話をするとは。 進学する学校を間違えたのでは。

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