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「──っ! ──っ!」 遠くから怒鳴り声にも似た叫びが聞こえ、薄らと目を開けたことにより、いつの間にか寝ていたことを自覚する。 そして、感じる頭痛。 「朱音っ! あんた何してるの! って、真っ暗じゃない!」 「ん⋯⋯うっせーな⋯⋯」 「うるさいじゃないでしょ! そのまま寝てたのっ? 本当に風邪引くわよ! ご飯は?」 「わーた、わーたって! 今行くし! 頭に響くんだよ⋯⋯」 重たい体を気だるそうに起きながらも対抗して叫ぶと、「頭? 頭が痛いの?」ときょとんとした顔で返される。 「髪もきちんと乾かさず寝るから、風邪でも引いたんじゃないでしょうね? せっかくお風呂で体を温めたのに意味がないじゃない」 「⋯⋯そーすね」 「なんでもいいけど、食べに来るのなら下に降りてきてね。お父さんも帰って来てるし、紫音君も待たせているから」 「⋯⋯うん」 紫音。 扉が閉まるのを見届けながら、さっき見た紫音のことを思い出す。 何となく気まずいな。 会って何度も感じているその気持ちに辟易しながら、やはり風邪だと言ってこのまま寝ていようかと思っていた。 再び横になろうとした時、見計らったかのように鳴る腹。 それを聞いて、「減っているのかよ」と小さく笑い、仕方ないと部屋を出、階段を降りて行く。 台所のある部屋から漏れ出す明かりのおかげで、廊下は幾分明るい。それを頼りにしてその部屋へと赴く。 「──紫音君って、好きな子いるの?」 母の嬉々とした声が聞こえる。 またベタな話題を。 その声さえも少しズキズキとする頭に響いて、顔をしかめる。 さっきよりも体調が悪化したような。 「⋯⋯えぇ、まあ⋯⋯いるといえばいますね」 「あらそうなの〜。どんな子なの? ⋯⋯と、朱音が来たわね」 台所を背に両親が並び、左奥の母の前には紫音が座っているのだが、朱音が来た瞬間、紫音が僅かに俯いたことにより、母が気づいたらしい、こちらに顔を向けた。 「頭は大丈夫なの?」 「まだ痛いけど、腹減ってるし」 「どこか具合悪いのに、お腹が空いているだなんて変ね。まあ、いいわ。揃ったことだし、食べちゃいましょ」 朱音が必然的に父の前、紫音の隣に座る形となり、母がそう言った後、それぞれ「いただきます」と言って、料理に手をつけていく。 「さっきの話だけど、どんな子なの?」 ある程度食べ始めて経った頃、母が再びその話題を持ち出した。 いつも一人でいるのが当たり前で他人に興味無さそうな紫音が好きな子がいるだなんて意外だ。 唐揚げを食べながら、二人の会話に耳を傾ける。

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