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耳元で固い何かがぶつかり合う音が気になり、目を覚ました。 目を覚まして気づくのは、誰かがいつの間にか消した部屋の中、ベッドのそばにいる誰かの気配。 そちらに顔を向けた時、目を覚ましたきっかけの物音は氷枕だと気づきつつ、次にその気配は誰なのかと気づいた。 「しおんにぃ⋯⋯」 開ききってなく、さらに薄暗闇の中というのもあって、紫音の輪郭が薄らと見えた。 紫音はそばに座っているらしく、顔との距離が近かった。 驚いて目を開いたが、頭痛に顔が火照っているくせに、体は震えが止まらないぐらい寒気を覚えており、体を背ける気には無かった。 本格的に体調を崩したようだ。 小さく笑うと熱っぽい息が漏れる。 「⋯⋯熱を出した。ったく、あんなことをしているから、こうなるってことが何故分からない。いつまでもあの頃の子どものままだ、お前は」 「あの頃⋯⋯?」 「⋯⋯っ、独り言だ。さっさと寝ろ」 「⋯⋯うん」 いつも以上にぶっきらぼうな物言いに身がすくみ、小さく返事をした後、目を瞑った。 早く寝ますようにと。 そう念じ続けていると、「⋯⋯今から言うことは独り言だ」と言いながら、朱音の頭に手を置いた。 ぴくり。 さも自然としてきたことに非常に驚いた。してくるとは思わなかった。 「⋯⋯帰りに朱音が水溜まりに入った際、昔、わざと入って遊んでいたことを思い出した。濡れるからと注意しても、お前は何とも思っていなくて、まるで聞きもしなかった。そうしていると、急に引っ張られて、そうされたものだから、よろけて服がずぶ濡れになった」 言われてどことなく思い出してきた。 長靴に伝わる水の感覚と、自身の足の力加減によって変わる水しぶきが面白く、それを一緒にやりたくて紫音の手を引っ張ったのだ。 紫音の有無を言わさず、無理にそうしたものだから、結果、紫音は顔ごと突っ込む形で水溜まりの中で転んでしまった。 母が言っていた、「紫音君をまたそうやって、無理やり水溜まりに入れたの!?」と怒っていたのはこれのことだったのかと、今ようやく分かった。 「⋯⋯しおんにぃ、ごめん」 「⋯⋯っ、謝ることじゃない。むしろ、嬉しかった」 「え⋯⋯?」 思わず目を開けると、徐々に見慣れてくる紫音と目が合った。 と、そこでふっと笑ったような気がした。 目を丸くした。 そんな驚いている朱音の頭を撫で始めたことにさえ驚きを隠せないでいると、話を続けた。

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