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「⋯⋯子どもの遊びを知らなかった俺は、あんな遊びがあるのを知らなかった。服が濡れてしまったら自分の親に怒られると思うと、あんなに楽しそうに遊ぶのを一緒に遊べないのが面白くなくて。結果、思いきり濡れる形になったが、それよりも何だか楽しくて、自分でも驚くぐらい笑ってた」 引っ張る前に紫音が迷うような言い方を、夢で見た。 あれはそういう意味だったのかと、今分かり、だが当時の自分はあの時の表情は、理由は分からずとも悲しそうに見えたから、ただ遊びたいのかなと思うぐらいであのような行動したまでで。 紫音の家庭事情は分からなかったが、世間的に見れば厳しい部類であったことを分かってしまった。 ある程度自由奔放に育てられた自分からしてみれば理解出来ないことであって、あのようなことも自分からしてみれば何ともないことなのに、感謝されるだなんて。 あの夢の続きの後、急に笑い出した紫音をびっくりして見ていたような表情をすると、「ともかくっ」と声を上げた。 「⋯⋯今、言ったことは全て独り言だ。全て夢の出来事だ。次に目を覚ました時は忘れろ。絶対に忘れろ」 さっきまでの少し柔らかい口調とは打って変わってのとげとげとした、釘を刺すような言い方に、全力で頷いた。 「⋯⋯早く寝て、よくなって」 「⋯⋯あ、うん。⋯⋯じゃあ、寝る。おやすみ、紫音」 「⋯⋯おやすみ。⋯⋯朱音」 目を瞑ったタイミングで、ぽつりと優しく包み込むように呼んでくれた。 少し驚きながらも、嬉しさが勝り、静かに降り続ける雨音を聞き、撫で続ける紫音の優しい手に包まれながら、眠りについた。

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