51 / 113
4-24
「え!? そこまで!」
「そこまでするほど、あんたのことが本当の弟のように可愛くて仕方なかったわけ。大好きなのよ」
「大、好き⋯⋯」
顔が火照っていくのを感じた。いや、これはまだ熱があるせいで、突然また熱が上がったからだと思われる。断じて、『大好き』で反応をしたわけじゃない。断じて。
と、聞いてもない言い訳を自身の中で自問自答をしていると、母が意味深にふっと笑った。
「そういうことがあったから、紫音君はあんたが熱を出すと心配で心配で、気が気じゃないわけよ。じゃ、寝てなさいよ」
「え、あっ」
早口気味に部屋を出ていく母を呼び止めようにも、とっさに言葉が出ず、口が開いたままになってしまった。
「⋯⋯」
バタンと後ろに倒れると、新しく交換してくれたという氷枕の中の氷がぶつかり合う音が聞こえた。
紫音が持ってきてくれた氷枕。
そのような感じだと昨夜も持ってきてくれたのだろう。
そう考えると嬉しくてたまらなくなる。
屋上で会っている時は、そのような素振りは見せてくれなかったので、どことなく嫌われているのかと思ったりもしていたが、水溜まりではしゃいでいるところを「風邪引くから」と自身が濡れることも気にせず傘に入れてくれたりもした。
口調や態度は変わってしまったものの、優しい性格は変わらないようだった。
やっぱり、しおんにぃはしおんにぃだ。
「早くよくなって、しおんにぃに真っ先に礼を言いたいな」
気まずいと思っていたことは気にならなくなり、きちんと真っ直ぐ紫音を見られそうだ。
早く明日にならないかと思いながら横になると、携帯端末が点滅していたことに気づく。
それはチャットアプリからの通知が来たことを示すもの。
携帯端末を手に取り、ロック解除し、通知欄を見てみると、『熱出したんだってなww』や『バカは風邪を引かないって聞いたけどな? あ、朱音はちょいかしこいからなっちゃったのかー』という朱音を茶化すメッセージが何件も来ており、「あいつら暇かよ」とメッセージを返す。
『引く時は引くんだよ』
すると、数分も経たないうちにメッセージが来る。
『トラックにずぶ濡れにされて、ヤケになって傘を差さずに水溜まりで遊んだって聞いたぞ。あの後、マジしょーもないことしてたのな』
ん? と眉間に皺を寄せて、大野から来たメッセージをもう一度ゆっくりと読み直す。
何故、そんなことを知っている?
『そのこと誰に聞いたんだよ』
聞かずとも誰に聞いただなんて、十分に分かっているのに聞かずにいられなかった。
『誰って、紫音先輩からだよ』
ともだちにシェアしよう!