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あれからしばらくして、放課後になっても行けず、その後気を取り直し、アプリで『俺の後先考えない行動のせいで怒らせてしまった。ごめん』と送ってみたが、既読すら付かなかった。 いつかは見てはくれるだろうと見てみるが、ガッカリするという毎日を送っているうちに期末試験が迫り、気の乗らないまま勉強をしていた。 今回も教えてもらおうとしていた罰が下ったのだろうか。 憂鬱な気持ちを抱え、試験が始まり──。 「夏休みだーーーー!!!」 海に向かって叫ぶ大野達に、耳を塞いだ。 あれから試験に臨んだものの、やはり自分の力だけでは及ばず、赤点しか取れなかった。 他の友人らは、「前のはまぐれだった」と嘲っていたが、大野だけは何かを──あの後から何かしら──察したらしく、「次は取れるはずだって。しかも、前のおかげで夏休み中でも補習に行かなくていいんじゃね? 良かったな」と背中を優しく叩かれた。 メンタルをやられにやられていたせいで、優しくされたこともあって、大泣きしたのは思い出しくない部分であったが。 「やっと、補習から抜け出せて良かったわ〜」 「あれ本当に意味ないよな。そうやっても結局は、赤点やら成績が足りなくて、冬休みも行くことになるんだからさ」 「だなー。俺らの夏休み返せやー!」 大野と会話していた友人らがそう言って叫んだのを、他二人も「返せー!」「彼女くれー!」と叫んでいた。 「彼女というと、補習が終わった打ち上げで行った夏祭りに会ったことを思い出すわー」 「あぁ、あれなー。儚い夢のようだった⋯⋯」 二人の友人が遠い目をしながら言うのを、大野は「だから声を掛けるのを止めろって言ったのに」とあの時に言ったようなことを言っていた。 あの時のこと──三人が補習期間が終わったこともあって、朱音の気分転換も合わせて、夏祭りに行くことになった。 朱音と大野は祭りの雰囲気を楽しんでいたが、二人は女の子目当てであった。 男らだけではむさ苦しいということと、この陽気な雰囲気の流れで彼女が出来るかもという淡い考えからであった。 その二人を見て、あほらしいと大野と共に思っていた中、とある神社前で待っている女の子に目が止まった。 黒髪で首元辺りに団子を作り、白地の浴衣の模様と同じような花の簪を差し、両手に巾着袋を持った姿は、触れたら壊れてしまいそうな儚さを持ちつつも、薄い化粧はより彼女を艶やかに映えさせる魅力があり、一言で言えば可愛い子だった。 道行く人達も思わず見てしまったり、カップルの男性が見ていたのを気づいた彼女が、「何見てんのよ!」と遠くからでも分かるぐらい盛大な音を立てて、叩いてしまう始末。 そして、例に漏れず、「可愛い子発見!」と二人が駆け出したのを機に大野と共に止めるべく、その後を追った。

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