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あっという間に夏休みが終わり、二学期が始まってしまった。 夏休み前に比べると、普段の調子に戻った朱音は、「まだ夏休みが続けよな〜」と会話をし、気だるそうに廊下を出ていく同級生を尻目に、合間を縫いながら、駆け出して行った。 カバンが重いことに走りにくいと思いながらも、意識してないと頬が緩みそうになっていた。 すれ違いざまの先生に「廊下は走るなよー」というありきたりなセリフを適当に流し、階段を二段飛ばしで駆け登り、屋上へと扉を思いきり開ける。 ちょうどヴァイオリンをしまおうとしている最中の会いたかった人物の後ろ姿を捉えた時、「しおんにぃー!」と叫んだ。 呼ばれた紫音は見るからに肩を強く震わせて、顔だけこちらを振り向いた。 機嫌悪そうではない、驚いているような表情の紫音の元へと駆け寄った。 「しおんにぃ! 夏休みの間何してた!? 俺はね、ダチと夏祭りとか海に行ったんだけどさ、夏祭りの出来事が面白不思議で、それがきっかけでダチらが女になろうとしているのが面白おかしくてさ! で、海でこれを拾ったんだけど──」 「朝田」 カバンから取り出そうとした時、ワントーン低い声で呼ばれて、ぴたりと止まった。 あ、怒られると思い、すーっと目を逸らしていると、こう言った。 「⋯⋯メッセージでも見たから十分に分かっている」 ため息混じりに言われて、「あ、そっか」と言った。 紫音から送られたメッセージの後、『分かった! 土産もあるから楽しみにしてて!』の続きに夏休みでの出来事を送っていたのだが、紫音の姿を見かけた途端、話さずにはいられなくなり、結果好きなものを語りだしたら止まらないオタクのように、早口気味に話しだしてしまった。 恥ずかしい。 「ご、ごめん。しおんにぃ⋯⋯」 「⋯⋯謝るのは、俺の方だ」 「え?」 呟きにも似た言葉に、思わず顔を向けると、楽器ケースに入れたヴァイオリンを見つめる紫音の姿があった。 「夏休み前に急に怒鳴ったことだ」 「あ、あれは⋯⋯。⋯⋯俺がまたあんなことをしたから、心配して怒ってくれたんだろう? あれは、俺が悪いんだよ、だから」 「⋯⋯だけど、落ち込んでいただろう」 「え、なんで知って⋯⋯」 あんなことがあった後、紫音には会ってないのだが、どこかで見ていたのだろうか。 紫音が小さく口を開き、引き結んだ後、「それは、大野から聞いた」と答えた。 「あ、ああ! 大野から! なんだ、そうなんだぁ」 だから、知っていたのか。 アプリの連絡先を交換したのだから、朱音の行動を言っていたのかもしれない。 本人が知らない裏でそのようなことをされるのは恥ずかしいが、同時に大野よりも自分に言って欲しいと思ってしまう。 また、こんなことを思ってしまっている。 海に行った時からおかしいぞ、俺。

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