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「それよりも、さっき言いかけた土産は何なんだ?」 「あ⋯⋯あぁ、これのことなんだけど⋯⋯」 さっきより気乗りではないが、促されるがままにカバンから取り出し、正面に向き直っていた紫音に見せた。 「海でたまたま見つけたんだ。しおんにぃ、憶えているかな。今は綺麗な形をしているけど、元は誰かが捨てたビンからなったものだから、しおんにぃはあまり良くないとも思っている的なことを言ってたよね。だけど、やっぱ、俺にはただ綺麗だと思ってしまうんだ」 袋を広げて顔を覗かせた青いシーグラスが、夕暮れ色と交り合い、まるで夕方の海を思わせる色合いになっている物を、紫音はその一つを手に取って、見つめていた。 憶えているのかと訊いたが、紫音が憶えていないはずがないのだ。 きっと今だって、アレを肌身離さず持っているはずだから。 「⋯⋯おそろい物を作ろうってことになって、自分の名前に入っている色を探そうとした。俺のは見つかったが⋯⋯」 「そう。俺のがなかなか見つからなかったんだよな。だから、紙粘土で作ったんだっけな」 あれは朱音の母が提案したのがきっかけで、シーグラスを見つけようとした。 が、茶色や時に青、緑が多く見つかるものの、紫や赤はなかなか見つからなかった。 『あかとのがないー! ないない! しおんくんはみつかった?』 『ううん。ぼくのもなかなか⋯⋯むらささきとかあかのビンがそもそもないかもだから、みつかりにくいのかも』 『そうなんだ⋯⋯』 掘っても意味が無いのに、八つ当たりをするかのように砂を掴んだ手のまま止め、がっかりしていた。 紫音と同じ物を持てることが嬉しくて、早く見つけようと思っていたのに、これじゃ意味が無い。 そばで見ていた母が、「それじゃあ、他のにしようか」と言ったその直後。 『あ⋯⋯あった⋯⋯っ』 呟きにも似た驚きの声を上げている紫音の方に顔を向けると、小さな手には丸くかたどられた紫色の破片が、太陽の光に照らされて、その存在を示していた。 それが唯一無二の物のようで、自分だけの宝物のように見えて、朱音の小さくて、まん丸な瞳をらんらんと輝かせるきっかけになった。 「──しおんにぃがやっと見つけられたシーグラスが、本当に欲しいぐらい輝いていてさ。だから、自分のも必死になって探していんだけど⋯⋯結果、自分で作らなきゃいけなくなったけど、やっぱり見つけたやつが作りたかったって、駄々をこねにこねまくっていたんだっけな」 「⋯⋯親がすごく困っていた。⋯⋯だが⋯⋯」 「だが?」 何故か不自然な区切り方をする紫音の言葉を繰り返し訊いてみたが、「⋯⋯なんでもねぇ」とシーグラスを置いた。

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