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親に紫音と同じ楽器をやりたいとねだった。が、親はそれを観たからそう思ったのだろうと思ったようで、もらったのはその戦隊モノに出てくるオモチャのヴァイオリンだった。 今ならば、ヴァイオリンはそんなに簡単に手に入れられる物ではないし、月々の習い事の費用も馬鹿にならないということが十分に分かるが、当時の幼い自分に分かるはずがなく、「これじゃない!」と大泣きした覚えがあった。 しかし、その後は親に説得されたのか、気でも変わったのか、そのオモチャで紫音と同じように弾いていた気になっていた。 「海行った時に思い出したんだけど、紫音って、水泳も習ってた?」 「⋯⋯小学生までは」 「あ、やっぱり? 海見てたらさ、紫音に泳ぎ方を教えてもらったなって。けど、それも紫音がいなくなってから泳ぐことを諦めたんだよね。だから、ヴァイオリンを習っていたら、本当、親に怒られるところだったなって⋯⋯」 自嘲した。 そうなってくると、紫音なしでは生きられない自分になっているなと思うと、つくづく自分に辟易する。 「──まさか、兄だったなんて⋯⋯」 ステージ上から聞こえてきた声に思わず振り向いた。 先ほど闘っていたレッドが、仮面を覆っていた敵側の人に向けられていたようだ。 「そんな⋯⋯! でも、レッドの兄って敵に巻き込まれて亡くなったって言ってたよね?」 「操られていたってことか⋯⋯」 「こんなことってありえるのかよっ!」 仲間のピンクは悲鳴のような声を上げ、ブルーは冷静さを装いながらも、端々に動揺を隠しきれない声で言い、グリーンは抑えきれない怒りを地面に拳を叩きつけていた。 「え、なに、この展開⋯⋯。闘って終わりーじゃないのか⋯⋯。なぁ、しお──」 振り向いた直後、言葉が途切れてしまった。 朱音を繋いでない方の手を、顎にやり、思案してるような格好をしていたが、その見る目線が見るからに真剣であった。 何度も瞬いてしまった。 学生が考えた、お世辞にもクオリティが高いわけでもないエセヒーローショーに、何故、そんなにも真剣に見ているんだ。 「し、紫音⋯⋯?」 「第十三作目大合奏戦隊バンバンジャー第二十七話にてバクオンガーの幹部の一人とレッドが互角に闘うシーンがあるんだがその時もレッドのギターの攻撃でその敵の仮面が割れたがまさかの敵がレッドの兄で後に追加戦士のバンヴァイオレットとなる人と再開することになるヴァイオレットもバクオンガーに音を奪われて廃人状態となりそのまま行方不明となっていたが操れていたようだこのヒーローショーも似たような状況なんだろう」 「⋯⋯お、おう⋯⋯お⋯⋯?」

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