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6-12
「なぁ、紫音。こっちなんかに休憩する所ある?」
「⋯⋯⋯」
「なぁって!」
何も話さず、朱音の歩幅に合わせて歩く紫音が何だか怖く感じた朱音は、廊下に響くぐらい叫んだ時、足が止まった。
やっと人の話を聞く気になったのかと思った矢先、目の前の教室の扉を開けた。
そこは、乱雑に机と椅子が置かれている、恐らく物置と化した教室だった。
しかし、こんな所を休憩場所にするつもりなのか。
「紫音、ここで休憩するつもり?」
「そうだ。入るぞ」
「え、ちょ⋯⋯!」
手を引かれるがままに紫音の後に入っていった。
直後、中へと追いやるように手を離された後、紫音は後ろ手に扉を閉めた。
その間もカーテンで閉められていた薄暗い中でも見据える黒い瞳が、朱音を捕らえて離さない。
いつものような、睨みつけているわけでも、悲しんでいるような瞳でもない。
本当に何も感じ取れない、無であった。
それがより、恐怖を増し、朱音は人知れず震え上がらせた。
「⋯⋯し、紫音⋯⋯? とりあえず、電気付けてくれないか? 薄暗いから、気分も下がるっていうか⋯⋯」
「さほど、暗くもないだろう」
「そりゃあ、そうなんだけど⋯⋯」
一歩一歩近づいていく度に、朱音は一歩一歩後退する。
ガッと靴に当たり、後ろを見やると、机の足が見えた。
これ以上後ろに行けない。
再び前を向くと、眼前に紫音が迫っていた。
すると、手を上げるのが見え、とっさに目を閉じた。
「しおんにぃ⋯⋯っ⋯⋯」
「……怖がらせて、ごめん」
そう紡ぎながら、ぽんと頭に手を置かれた。
すぐに目を開くと、申し訳なさそうな顔をする紫音の姿があった。
「あと、言葉足らずだった。ここなら、誰の目も気にせず休めるかと思って」
「⋯⋯な、なんだぁ、そういう意味だったかぁ⋯⋯」
強ばっていた体から力が抜け、机に座る形となると、紫音は撫で始めた。
安心させるために撫でてくれているのだろうが、元々紫音に撫でられるのが好きだったので、ふにゃりと表情が緩むぐらい、安心しきっていた。
と、不意に撫でるのを止めたかと思えば、右手を手に取られ、顔に寄せていた。
「⋯⋯骨にヒビが入ってしまったんだよな」
「あ、うん⋯⋯ちょっと、思いきって殴ってしまった。はは⋯⋯」
「利き手なのに、何も持てやしないだろう」
「一ヶ月まともに何も出来やしねーな。どっしよかなー。授業、サボっちまおうかなー、なんてな」
「⋯⋯⋯だったら、」
本当にこの一ヶ月どうしようかと思い始めた。期末も一ヶ月もしないうちに始まるのになと思っていた時だった。
「⋯⋯だったら、俺が代わりになってあげたかった」
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