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俺のパンツはな、と一人でに語り出し始めた大野を完全に無視をした委員長は、ぼんやりとやり取りを見ていた朱音の方を振り向いた。
「朝田君、まさかあの新倉先輩に告白されるだなんてね⋯⋯。ずっと想い続けていたって、いつ頃から?」
「⋯⋯幼稚園、入るか入らないかぐらいの時から」
「えっ!? そんな頃から!?」
委員長の下にまた違う女子が顔だけを出てきた。
そのことに非常に驚いた顔をしながら、コクコクと頷いた。
すると、委員長とその女子は揃いも揃って、薄気味悪い笑みを浮かべた。
ゾッと背筋が凍った。
「へぇ? なるほど? そういう展開がきますか〜」
「幼馴染みだった上に、実の兄のように慕っていた間柄が、まさかの恋愛に発展! これは熱いわね⋯⋯!」
「先輩が攻めで、朝田君が受けってこと⋯⋯!? 今後の期待が気になりすぎるわ⋯⋯!」
「⋯⋯えっ、え⋯⋯と、何の話で⋯⋯」
「「朝田君っ!!」」
声を被らせて呼ばれ、朱音はビクつく。
「私達、朝田君の恋を応援するわっ!」
「え、なんで、そうなる⋯⋯?」
「これからはこんなやつに相談するよりも、私達に相談して! 今までおわびの分以上にしっかりと成就させてあげるから!」
「いやぁ⋯⋯、俺はそこまで⋯⋯」
「相手がそう告白をしてきたのなら、それに答えなくてはいけないと思うのよ。まだ返事してないんでしょ?」
「まあ、まあ⋯⋯そうだけど…⋯」
「じゃあ、そうと決まれば作戦会議ねっ!」
「作戦会議⋯⋯?」
「今はひとまず着替えてちょうだいね」
「は、は⋯⋯い⋯⋯」
勢いの勢いのまま二人は出て行くと、更衣室の外で、何やら他の女子と盛り上がっている声が聞こえた。
「──ってなわけで、俺のパンツの魅力分かった? って、誰も聞いてねーのかよ!」
隣で騒ぐ大野をよそに、朱音はエプロンをぎゅうと抱きしめる。
今まで紫音だけしか考えていなく、たとえ誰かに告白されていたとしても、上の空であったと思うし、自分のことじゃないと思い、その返事をしたことが無かった。
そして、その一途に後を追っていた人から正面に言われて。
女にまともに返事をしたことがないのに、ましてや「兄」と慕っていた幼馴染みにきちんとした返事なんか出来るのだろうか。
その幼馴染み以上の関係に、自分はなりたいと思うのか。
けれども、その告白を断る形になり、傷つけ合った状態で、それに今度こそ永遠の別れになるかもしれなくて、それはそれで嫌だった。
けど、だとしたら。
今じゃ何も分からない。
何が最善策なのか、全くもって分からない。
──理想としている人物のようにならなくては。何のために、全て捨てて、こうなっているんだ⋯⋯。
自分に言い聞かせている紫音の言葉が頭に浮かんだ。
そうして、次に「なりたいもの」という言葉も。
紫音は何かになろうとしている。けれども、何になりたいのだろう。
自分がいつかはっきりとした気持ちを伝えられることが出来たら、腹を割って話してくれるのだろうか。
けど、そのいつかって、いつ。
その疑問が氷解することなく、朱音の中でまたわだかまりを残していくのだった。
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