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それから、出し物を片付けるのと閉会式がある日となっていた。 閉会式⋯⋯紫音が締めとして、全校生徒の前でヴァイオリンを弾くプログラムがある。 あんなことがなければ、ただ素敵だ、最高だと思っていただろう。 今は──どんな気持ちで見ればいいのか。 胸の痛みを覚えながら、机を並べていると、「朝田君」と声を掛けられた。 ふと、顔を上げると、にっこりと愛想良く笑う女子がいた。 文化祭実行委員長だ。 「男子の手を借りたいの。ちょっといいかしら?」 「⋯⋯いい、けど⋯⋯」 「やだぁ、そんなに警戒しないでよ。取って食いやしないわ」 「⋯⋯バッ! そんなんじゃねーよ!」 カッと血が上って声を荒らげると、委員長はクスクスと笑っていた。が、ふっと少し困ったような笑い方をした。 「私、いや、私達が勝手に嫉妬して、朝田君に嫌がらせをしていたことで信用してないのは分かってるわ。⋯⋯あのようなこともあったし。だから、謝って今までのことは無かったことに、だなんてそんな都合のいいことは言わないわ」 「違う。そのことは今はいい⋯⋯」 「そうね。今、朝田君が一番に問題にしてるのは⋯⋯ううん。まあ、いいわ。とりあえず来て」 「え、わっ!」 突然、ぐいっと手首を強引に引っ張られたものだから、前のめりになりかけた。 「ちょ、オイ! 何すんだよ!」 「いいから、いいから! はい、この段ボールを持って、捨てに行くわよ」 「は、はあ? 意味分かんねーんだけど⋯⋯」 「男子の手を借りたいって言ったでしょ。ほら、とっと行く!」 「⋯⋯っ! ちょ、っと!」 束になった段ボールを押し付けられた挙げ句、背中を押され、共に教室を出ていく。 後ろからは、「いってら〜」「仲良くな」と大野とその友人が茶化すような声が聞こえ、文句を言おうとしたが、「朝田君」と呼ばれた。 「文化祭から二日経ちましたが、やっぱりまだ引きずってます?」 「⋯⋯ああ、そりゃまあ、そっすね⋯⋯」 「まあ、そうよね。そんな少しの期間で立ち直れるわけがないよね。どんなに頭の悪い朝田君でも、すぐには無理かー」 「バカは関係ねーだろ」 「いいツッコミだわ」 ゴミをまとめた袋とは違う手を口元に寄せながら、肩を震わす委員長に、「で、何なんだよ」と不貞腐れたような言い方をする。 「何なんだよって、何が?」 「だから、なんで俺とゴミ捨てなんかに⋯⋯」 「だから文化祭の時に言ったでしょう。今まで以上のおわびとして、恋の相談をするって!」 「ああ、そんなこと言ってたな。マジだとは思わなかった」 「マジに決まってるわ!」

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