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ずいっと委員長の顔が迫った。 「あのね! 恋って言うのは、とても痛い思いをしながら、それでも相手のことが好きだから、一緒になりたいから、そんな思いをして、そして、勇気を振り絞ってその想いを告げるのよ! どんなに自分が相手のことが好きだからって、その相手が自分のこと好きじゃなければ想いは叶わないのよ。下手したら、今後の人生にまで引きずることになるわ」 「そんなにも⋯⋯」 「そんなにもよ! 先輩も朝田君のことを心の支えにしていたんじゃないの? だから、思いきって言ってみたものの、この関係が壊れてしまったらどうしようって、恐れて、とっさに口では突き放すような言い方をしたんじゃない?」 「そういう、こと⋯⋯なのか」 思い出すのは、保健室に慌てて入ってきた紫音の捲し立てるように、朱音のことを心配に心配を重ねた、優しい声音で紡がれる言葉。 そして、物置と化した教室で言っていた、「嬉しい」の言葉。 あれが全て本心であって、朱音のことを大切に思っていることならば。 「やっと、新倉先輩の気持ちが分かってきた?」 「ああ。だが、今すぐにでも返事するっていう勇気が⋯⋯」 「そうね。すぐには無理かもしれないわね」 「⋯⋯うん」 「⋯⋯⋯先輩、今日の締め、きちんと出来ればいいけど」 「えっ」 「あっ」 朱音が聞き返したような言い方と、しまったような顔をして、声を上げる委員長の声が重なった。 「ヤバい。このことはサプライズであったのに⋯⋯、つい口が⋯⋯」 「⋯⋯あ、いや。しおんに⋯⋯紫音から聞いていたし、てか、サプライズだったのか?」 「一応ね。一部の人はどこで聞いたのか、知ってるみたいだけどね。まあ、毎年やってるみたいだから、大半の人は知ってるか」 「毎年⋯⋯」 ショックを受けた。 どっちにしろ、誰も彼もがあの音色を聞いていたのか。 だから、昼休みや放課後に聞きに行く女子達を見かけるのか。 「そうなのか⋯⋯」 「んー? なんかショック受けてない? 何? 自分だけしか知らないことを知っていて、優越感に浸っていたわけ?」 「ち、違っ!」 「幼馴染みの特権みたいで素敵ね! けど、申し訳ないことにみんながみんな知っているのよね〜。残念なことに。申し訳ないことに!」 「な、何なんだし、その言い方」 「べっつにぃ? あまりにも顔に出ていて、からかいたくなったのよね!」 「クッソ、うざ」 「ほほほ、よく兄弟にも言われるわ」

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