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あまりにも予想外のことをさらりと言われたのもあって、当惑し、頭がぐるぐるしてくる。
自分がきっかけで、そこまでの行動をするのか。それはあまりにもハマりすぎてはいないだろうか。
「あ、だからか」
「ん? どうしたの」
「あ、いや、アプリのアイコンにそのストラップと戦隊モノのオモチャが一緒に撮られていたし、文化祭の時、あまりにも詳しかったから。そんなにハマるものなの⋯⋯?」
「ハマるものなんだよ。それに、僕の家が普通の家庭とは違って、そういう子どもが遊ぶようなこととか、番組とかを観てこなかったから、尚更。そんなことがあったし、偶然にも両親の仕事の都合で引越しせざるを得なくなったし。朱音と一緒にいられなくなるのは、本当に悲しくて、親の目を盗んでは泣く毎日を送っていたよ。それで支えにしたかったそれを観ていたら、テレビを壊した上に、僕が目につくところにはテレビを置かなくなったけどね」
「⋯⋯ひ、ヒステリックババァ⋯⋯」
「たしかに。その言葉が実に合ってる」
紫音は愉快そうに笑っていた。
その後も何度か引越しをしていた先で、紫音は成績を残し、いつしか観たテレビに出たことにより、学校では注目の的となっていたが、なかなか親しい友人も出来ず、朱音と交換したストラップを眺め、数々の習い事をこなしていたが、ある日そのストラップが見つかってしまい、捨てられそうになったことがきっかけで、勘当し、母の妹──紫音から見れば叔母──の所に世話になっているのだという。
ちなみにその叔母も音楽の才がないと実の親に勘当されていたが、紫音の母とは真逆の、優しく、温厚な性格もあり、昔から紫音のことを気にかけていたのだという。
だから、そのこともあり、これ以上迷惑を掛けたくないと、経済面に優しい、紫音にとってはかなり偏差値の低いこの学校を選んだのだという。
「⋯⋯思っていた以上の道を歩んでいたんだな」
「だから、特に朱音には話したくなかったんだよ。やっぱりガッカリしたでしょ?」
朱音はすぐに首を横に振った。
「そんなことはない。どうして、ガッカリしないといけないんだよ。どんな道を歩んだとしても、俺の中では昔と変わらない、優しくて頭が良くて、俺のことを一番に想ってくれている、そんなしおんにぃ⋯⋯いや、紫音が──好きだ」
勢い任せて言った想いを口にした途端、頬が熱くなるのを感じながら、瞳孔が徐々に開いていく紫音の言葉を待っていた。
少しの間、固まっている様子であったが、ふと薄い口を開いた。
「嬉しい⋯⋯やっと、朱音からの返事が聞けた⋯⋯嬉しい、とっても嬉しいよ⋯⋯!」
「わっ!」
抱きついた勢いのまま、もろとも倒れ込んだが、さりげなく紫音の手が朱音の頭にやっていたおかげで痛めることはなかった。
そうしたちょっとした気遣いですら、今では胸がいっぱいになる。
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