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3.

遠慮がちに背中に手が添えられる。 「朱音は優しい。ずっといい子だね」 「そうなわけねぇ。しおんに······紫音のことを困らせ続けているじゃん。今だって、言うべきじゃなかった」 「いいんだよ」 今度こそ、背中に回してくる。 「僕のこと困らせて。そうやって、朱音のことを笑わせてあげたいから。朱音の笑った顔が、どんなにも好きだから」 優しく紡がれる、素直に喜びたいはずの褒め言葉。 しかし、ほとんど憶えてない小さい頃の記憶の中で、紫音をここまで言わせてしまうほど困らせてしまったのかと、小さい頃の自分は何をしたんだと、心の中で叫びまくった。 「じゃ、改めて聞くよ。朱音はどんなことをして欲しいの?」 顔を覗き込むように、ほんの少し首を傾げて優しく問う。 紫音のことを弱みにつけ込んでいるようで良心が痛む。だが、長年会えなかった寂しさを埋めて欲しくて、甘えたい欲が我先にと出てしまった。 「······キス、して。もっとして欲しい」 このような場でないと言わない言葉を口にした時、急に恥ずかしくなって、消えそうな声を出してしまった。 それでも、紫音は喜びが隠しきれないといった顔を見せ、唇を重ねる。 さっきの余裕のない口付けとは違い、ゆっくりと朱音の唇の形だと、自身の唇に刻むかのように丁寧にやってくれるから、上手く息もでき、それに大好きな手に撫でられ、胸がはちきれんばかりにいっぱいになった。 好き。好き、紫音。 想いを、下手ながらも懸命に唇を重ね合わせていると、じく、と、下腹部がこそばゆく感じた。 それが気分が高揚しているんだと分かった時、足の間のが膨らみ、跨っている紫音の質量がやや同じ硬いモノと当たる。 それと同時に、はっとしたように唇が離れた。 「······紫音も、嬉しい?」 「······朱音となら、何だって嬉しいよ」 さっきのように頬を上気させる紫音のことを見ると、より興奮をかき立たせる。 我慢ならない。から、次の"お願い"を告げる。 「······だったら、紫音のソレ。俺のナカに挿れて」

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