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5.※女装
「え、しおんにぃ? 俺、自分で脱げるんだけど······」
カーディガンを脱がされ、今度はワイシャツにかけていた手が止まった。
「あ、ついつい······。昔はよく着替えさせていたものだから、体が動いてしまったね」
「そんなワガママも言ってたの?」
ワイシャツを脱いで、いよいよロングスカートを着ようとしながら訊くと、「うん、そうだよ」とさりげなく手伝ってくれながら嬉しそうに答えた。
「とても可愛いワガママだったよ。いつもなら、率先として自分で着替えるのに、僕がいると着替えさせたがるって、朱音のお母さんが」
「はぁ······」
曖昧に返事をしつつ、渡された服は前のボタンで留めるタイプなようで、留めていった。
「めっちゃクソガキじゃん」
「僕のこと本当の兄のように慕っていたから、とても嬉しく思ったよ。──エプロンやってあげるね」
それぐらいやるって、と言っても、さっさとやってしまい、後ろでリボン結びまでしてくれた。
「ヘッドドレスを付けて、と······。うん、見た目は着替え終わったね。やっぱり、可愛いな。写真撮ってもいい?」
見た目は?
気になる言い方をし、疑問に思ったが、朱音の部屋に来て以来の見たことがない満面な笑みで携帯端末を向けてくるものだから、それに応じて撮らせてあげた。
文化祭の時とは違う、膝下のスカートであの時よりかは下着は見えないものの、晒した足に直にくる肌寒さは変わらなく、そわそわとしてしまう。
「どうしたの」
「あ、いや······。スカートってマジで慣れないよなって。めっちゃすーすーするし。よくまあ、女子は履いているよな」
「······そんなこと考える余裕がないことをしようか」
「え?」
朱音の耳には全てが聞こえなく、紫音のことを思わず見ると、彼はまたカバンから何かを取り出し、それを見せつけた。
「さ、朱音。おいで」
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