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第4話
「あぁっ……あっ……んんぅ…♡」
「声出すな」
「んっ…ごめんなひゃい……♡♡ 」
玄関の扉に手を着いて、後ろから突かれる。
扉はカオルの漏れる息で曇り出す。
「…はぁっ…♡んぅ…」
声を我慢するカオルの口に竹崎の指が咥えられた。
太くて長い指で、舌を抑えられた。
「…ぅ…ぉぇ…」
嘔吐反射を起こして、口の中で唾液が増える。
「…よだれ垂らしてんのか」
「ぅ……ぇ…」
「…」
竹崎も少しは心配になった。
カオルの顔を覗き込むと、彼は嬉しそうに笑っていた。
「犬みてぇだな」
「んぅ……♡♡」
ご主人様の指を咥えて何度も嘔吐きながら、白目を剥いて喜んだ。
「……あぁ……出る……」
竹崎はもう少しでイけると、腰を激しく振った。
「んぁっ…!ぁ…ぅ……♡♡」
尚更気持ちよくて堪らない。
苦しければ苦しいほど、気持ちいい。
「イく……!」
「んーっ……♡♡」
腹の中で射精された。
竹崎は息を切らしながら、カオルの尻を掴んだ。
「…はぁ…ケツ締めとけよ、」
「…はい……」
そう言って尻からペニスを抜いて、竹崎はカメラを取り出して来た。
「…ぅ…ご主人様……♡」
「黙って手着いてろ。」
竹崎はシャッターを切る。
どろどろとアナルから出てくる精液。
「…カオル。顔、向けろ」
「……」
カオルはカメラの方を振り向いて、竹崎はまたシャッターを切った。
「…っ」
足に力が入らなくて、座り込んでしまった。
「馬鹿!おい、お前何処に座って……」
竹崎は怒ろうとしたが、カオルを見て止めた。
「ごめんなさい……」
「女の子座りが出来んのか、お前」
「…?はい…。」
カオルは身体が柔らかいからか、女の子座りが出来ていた。
「……待て…」
竹崎は少し離れてから、またカメラを向けた。
「……これいいな…」
もうセックス所では無くなったようで。
「…この照明違ぇんだよな」
「?」
「動くなよ」
「…はい……」
あちこち走り回って器具を持ってきては、照明を当ててカメラの位置を変えて…。
「…カオル。」
「…ご主人様……」
カシャッ
「掃除、しとけよ」
「はい…」
カオルはよろよろと立ち上がって、床に零れた体液を掃除した。
「……」
もちろん、竹崎は見守るだけ。
申し訳ない気持ちが全く無い訳じゃない。
カオルはこれで喜ぶから。こき使われると、喜んで働く。
「腹減った」
「い、今、ご飯作ります…!」
いつものように、カオルは全裸にエプロン。
竹崎もこの光景に慣れてきた。
「…家でも裸エプロンなのか?」
「……ご主人様の前だけですよ♡」
「別に頼んでもねぇし、喜んでもねぇよ」
「ふふっ♡」
「はぁ……」
「最後に家に帰ったのはいつだ?」
「うーん…思い出せないです」
「…ふぅん…そういや、ペットとか飼ってるのか?」
「…ペット…」
しまった。竹崎は思った。
「僕はご主人様のペットですから♡♡」
「くっ……」
カオルの返事を想像出来た自分がいた。
こんな事を言うような変態が、ペット飼う訳ないよな。なんとなく、納得した。
「ご主人様!…ご飯できました!」
「おう」
夕飯を用意してくれた。
必ずカオルは床で食べようとする。
「だから!!!!」
「?」
「膝にアザ着いたらどうすんだ!椅子に座って食え!」
「…はい…」
命令形で言えばカオルは素直に聞く。竹崎は学んだ!
「そうだ、ご主人様。」
「ん?」
「…今度、海外ロケに行くんです。」
「おう、良かったじゃねぇか」
「…ご主人様に暫く会えなくて…」
「仕方ねぇだろ。楽しめよ」
「楽しめる訳、ないじゃないですか…」
「…知らねぇよ、」
「ご主人様が居なきゃ、生きていけません」
「…生きていけてるだろ」
「う……」
寂しがるカオルは子犬のようだ。
「…なんかのお仕置だと思えよ」
「……」
「ちなみに、何処に行くんだ?」
「ロンドンです。」
「ロンドン…イギリスかぁ」
「はい。学生時代、留学してたこともあって…」
「え?」
「えっ?」
留学?竹崎は初耳だった。
「りゅ…留学?ロンドン留学?」
「はい。語学留学っていうか。」
「はぁん…てことは、お前英語喋れるのか」
「一応。」
「くそ…」
「?」
顔もよし、身体もよし、家事も出来る、そして…勉強も出来るだと??ふざけんじゃねぇよ…
「あぁ…そんで、どのくらいの期間なんだ?」
「5日間ほど。」
「そうか。」
「はい……」
ご主人様に会えないカオルは寂しそうにしていた。
後日、カオルは寂しがったままロンドンへ飛び立った。
「…竹崎さん、お疲れ様です」
「おう、お疲れ。」
同じカメラマンの山田が寄ってきた。
「今日、一杯どうすか」
「…ん…」
「いいじゃないっすか、たまには」
「…うん…分かった」
「よっしゃ、また後で。」
「…おう」
一瞬、カオルの事を考えてしまった。
「…何考えてんだか。」
夫婦じゃねぇんだよ、
竹崎は後片付けを終えて、山田と合流した。
「竹崎さん、駅近の居酒屋どうすか。この前、良いとこ紹介して貰ったんすよ」
「…如何わしい店じゃなければな」
「まっさかぁ!普通のっすよ、安心してください」
「……任せる」
連れてこられたのは、本当に普通の大衆居酒屋。
周りは騒がしいけど、凄く落ち着く。
「んじゃ、竹崎さん、乾杯」
「おう」
ビールで乾杯して、飯を食べて。
「…竹崎さんって、結婚しないんすか」
「はぁ?」
「いや、だって竹崎さん、アラフォーでしょ?」
「…痛ぇとこ突くんじゃねぇよ」
「彼女とかいないんすか?」
「…いる訳ねぇだろうがよ、逆にいると思ったのか」
「いえ、思ってませんけど」
「ひでぇ野郎だ」
ひゃははは!と笑う山田の笑い声は高くてうるさい。ここは動物園か?
「結婚願望ない的な?」
「…んまぁな。まだ考えられねぇ。」
「へぇ…」
「なんだよ、ニヤニヤしやがってよ」
「竹崎さんっておもろいっすね」
「馬鹿にしてんだろ」
「馬鹿にしてないっすよ」
どうでもいい会話を繰り広げながら、空のビールジョッキが増えていく。
「あ、カオル君だ。」
「え?」
店の天井近くにある大きなテレビ。クイズ番組が放送されていた。そこにカオルの姿が。
「カオル君って、頭良いって凄いっすよね。完璧じゃないっすか」
「……そうなのか?」
「ほら、あの有名なK大学の出身ですよ?」
「…K大学の出身で…ロンドン留学で英語が喋れる…だと??」
「えっ、そうなんすか!?」
「いや、この前。ロンドン留学してたって話を…」
「やば!!すげぇ…カオル君完璧なんすね」
「……気持ちわりぃ」
テレビに映るカオルは、難問のクイズに次々と答えていた。〝超名門K大学 文学部 英文学科卒 藤野カオル〟のテロップが。
「………」
竹崎の知るド変態のカオルはテレビには映らない。
見た目はスタイリッシュで、態度はクールな紳士。頭も良くて…。
テレビに映るカオルを見ながら、ビールを飲んだ。
「…竹崎さぁん…」
「お前、酔ってんじゃねぇか。もう止めとけ」
「う…」
「……はぁ。」
山田はすっかり酔いつぶれた。
「ほら、山田。そろそろ帰るぞ」
「うぅ…」
タクシーで山田を送り届け、竹崎は帰宅した。
「……ただいま…」
誰もいない家に帰ってくるのは久しぶりだ。
「…はぁ。」
部屋の照明をつけると、一気に寂しくなった。
そしてテレビをつけると、まだカオルが映っていた。
今度はトーク番組。ドラマの宣伝で呼ばれたらしい。
「本当に引っ張りだこなんだな」
勿体無い奴なんだな。そう思った。
「…勿体なくしているのは…俺かもな」
まだまだ輝けるのに、こんな家政婦みたいな事をさせていいのか。さらには性欲の捌け口みたいにして。
〝ご主人様のためなら…!〟
それでカオルが喜ぶので、竹崎は甘えていた。
「…風呂入るか」
竹崎はそそくさと風呂場へ行った。
「……」
鏡の前に立つと、ただのおっさんが目の前に。
「アラフォーになれば仕方ねぇよなぁ」
すっかり伸びきった顎髭を触った。
「…カオル君はあんなに綺麗なのに」
誰もいない部屋は閑散としていた。
二人だったのが一人減っただけなのに。
「…寂しがり屋はおじさんの方かよ。気持ちわりぃ」
独り言をぶつぶつ呟いて、シャワーを浴びた。
シャワーを浴びた後、鏡を再び見た。
「痩せなきゃな」
中年らしい、のぺっとした身体になってきた。少し焦りが出てくる。
「…うん…寝よう、眠い。」
なんやかんやで布団に入った。
久しくベッドで寝る気がする。
「……」
メールの確認がてら携帯を開くと、カオルからメッセージが送られてきていた。
〝ご主人様、今は何をしているんですか〟
〝寝るところだ、お前は?〟
〝僕は今、休憩でロンドンを回っています〟
「…ロンドンは…今何時なんだ?」
竹崎はすぐに調べた。こっちは夜が更けて、ロンドンは大体昼過ぎくらい。
そして、カオルからビックベンと共に自撮りが送られた。
「彼女みてぇな事すんな、こいつ」
鼻で笑って、既読を付けた。
〝楽しんでるじゃねぇか、俺は寝るよ。〟
〝おやすみなさい、ご主人様〟
「……ふぅ…!」
次の日、竹崎は休日。
アラームを掛けない日なんて、久しぶりだ。
昼あたりまで寝過ごした。
すると、家のインターホンが鳴った。
「んぁ…?」
めちゃくちゃに寝ぼけながら、扉を開けた。
「うわっ、老けたね」
「あ?」
「お兄ちゃん、入るよ。」
「あ?」
竹崎は頭が働いていない。
突然の訪問者は竹崎の妹、真由香だった。
「真由香。突然なんだよ…」
「えっ!?!?」
「は?」
「お兄ちゃん、遂に…」
「?」
「彼女できたの!?!?」
「はぁ?」
「だって!おかしいよ!!あのお兄ちゃんが!!こんなに!!家綺麗なんて!!!」
「うっせぇよ、朝から」
「朝じゃねぇよ!!起きろ!!」
真由香は兄の綺麗な部屋を見て驚いた。
「絶対そうだ。お兄ちゃん、彼女出来たんだね」
「違ぇよ、馬鹿」
「違わないでしょ!毎回ゴミ屋敷にするくせに」
「うるせぇよ」
「…絶対におかしい…ママに連絡しよ!」
「やめろやめろ…」
「じゃあ何!?この綺麗な部屋は????」
「…それは…」
うん、何から説明していいか分からない。
「遂にお兄ちゃんに彼女かぁ…!」
「はぁ…」
真由香は7つ下の妹。彼女は既に結婚しており、子供も二人いる。
そのお陰で竹崎は、母親から結婚を急かされることもある。
「お兄ちゃんも結婚、考えたら?」
「なんでそうなるんだよ」
「彼女と結婚の話はないの?」
「だから彼女いねぇって」
「ふぅん…」
「笑うな」
「ま、お兄ちゃんもいい年なんだからさ、いい加減考えないともう後がないよ?」
「もう無くなってるって」
「何、一生結婚しない、みたいな?」
「……うん……?」
「ほら、やっぱり少しはあるんじゃん、結婚願望」
「別に……」
真由香はソファにどっかり座ってテレビをつけた。
「あっ!カオル君じゃん!!かっこいい〜!」
「………」
「お兄ちゃん、カオル君と仲良いんでしょ??!!」
「別に、仲良い訳じゃ…」
「あ、会わせてくれない!?」
「なんだよ、無理。あいつ忙しいんだよ、テレビ見てりゃ分かるだろ」
「お兄ちゃん、お願いだよ」
「無理なもんは無理。」
「えーーーーー」
真由香もカオルのファンの一人。
カオルの表紙の雑誌や、竹崎の撮った写真集も勿論持っている。
その姿を見ていると、竹崎は少し気まずい。
「ママ、言ってたよ。龍一はそろそろ結婚しないのかーって」
「うっせぇなぁ……迷惑だって言っといてくれ」
「…彼女いるって言っておく」
「だから…!」
「…ママ、普通に心配なんじゃない?」
「結婚しないだけで心配されてもなぁ」
「だってアラフォーだよ!?」
「アラフォーで結婚の経験も無いとか終わりじゃん」
「世の中にはそんな奴が巨万といるんだよ。」
そんな心配は本当にありがた迷惑だ。
結婚なんて、考えたことも無かった。
「もう、お兄ちゃんったら、芸人になる!みたいな言い方で家飛び出したから、尚更心配なんだよ」
「芸人じゃねぇよ」
「だって芸人になるって言って家出た人みたいじゃん」
若い頃の竹崎は大学卒業後に、両親に写真家になりたいと言い出した。そして、なんやかんやでテレビ局に勤めて、細々と個人で活動し始めた。
特に個展を開ける訳でも無かったので、才能が無いだけだと自分に言い聞かせていた。
そんな時にカオルと出会った。
その時のカオルはまだ売れていなかった頃。
凄く、綺麗な子だと思った。依頼された時、喜んで引き受けた。その写真集が話題を呼んで、カオルは売れっ子になって、竹崎にも写真関連の仕事が降ってくるようになった。
「お兄ちゃん、将来考えなね」
「…うるせぇ、分かってるわ」
真由香の言葉に引っかかった。
竹崎自身にも写真家としての道があって、カオルにも俳優としてモデルとしての道が続いていること。そして、家族の事も。
「……こんなことしてて良いのか?」
竹崎は我に返った。
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