7 / 7

第7話

カオルと会わないまま、数日、数週間、と経ったある日、竹崎は1つのSNSの投稿を見つけた。 カオルのファンと思われる女性の投稿だった。 〝💞カオル君 誕生日おめでとう💞活動休止なの辛いけど、元気になって戻ってきてほしい!ゆっくり休んでね🥺🥺〟 コメントと一緒に投稿されたのは、カオルのいつかの写真。これは確か、映画の広告だったかな。 「…ん、誕生日?」 竹崎はカオルの誕生日を調べた。 ウェブ検索で一番上に出てきた日付。 「今日なのか…。」 カオルの誕生日は4月上旬の今日だった。 嫌になるくらいに、一緒に過ごしてきたはずなのに知らなかった。おめでとう くらい言えばいいかな、言うと気まずいかな、竹崎はあれこれと考えた。 「ガキじゃあるめぇしよ…。はぁ…帰るか」 仕事の終わりに、寄り道して帰った。 「…ん?」 自宅マンションに着いて、エレベーターに乗っていた時、携帯が鳴った。 「……カオル…?」 画面にはカオルの名前。 「…はい。」 『…ご主人様。』 「なんだよ。ご要件は?」 『…会いたい…です…。』 「…活動休止中に、俺と会うなんて……」 「ご主人様……」 エレベーターから降りた時、竹崎の自宅前に座り込むカオルがいた。 「……はぁ。風邪引くだろ。」 「最近、暖かくなってきましたから。平気です」 「……バカは風邪引かないってか」 「…えへへ」 久しぶりに見たカオルは、何だか痩せた気がした。 元から痩せ型ではあったが、少し骨ばったような…? 「入れよ」 「ご主人様。」 「うぉっ」 部屋に入った瞬間、竹崎の胸にカオルが飛び込んできた。 「会いたかったです…ご主人様…♡」 「……そうか」 「誕生日くらい、ご主人様と一緒に過ごしたいんです。」 「…記念すべき日に、こんなおっさんと居るなよ」 「ご主人様がいいんです。」 「随分とご主人様に執着してますねぇ」 「ご主人様…」 「お座り。」 「えっ?」 突然の命令にカオルは目を開いた。 「聞こえなかったか?お座り。」 「……わん…」 犬のように座り込み、返事をしたカオル。竹崎は手に持っていた紙袋から何かを取り出した。 「……首輪…?」 「…26歳おめでとう」 「…ご主人様…これ…」 カオルの首に赤い首輪が付けられた。繋がった長い鎖は竹崎の手に握られていた。 「…お似合いじゃねぇか」 「……ご主人様…♡♡」 竹崎が帰り道に寄ったのは、この首輪を手に入れようとしたから。いつもベルトやネクタイで代用していたので、カオルの好きそうな本物の首輪を買った。 「かなりの大型犬ですねって言われちまった」 「えへへ…」 「180cmも超える大型犬だもんなぁ」 「わんっ♡」 カオルの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。ふと竹崎は、祖父母宅で飼っていた柴犬を思い出した。 「犬扱いされんのと、奴隷扱いされんの、どっちがいいんだ?」 「…両方…です…♡」 「難しいな」 犬扱いなら、ペットを飼うのと同じように愛してあげるのも出来るんだけど。 竹崎の心の奥底にそんな思いがあった。 「………」 「ご主人様…♡」 「……こちとら溜まってんだよ。お前もだろ?」 「はい…♡」 「違ぇだろ」 「わんっ…♡」 鎖を引っ張り、首輪に繋がれたカオルを引き寄せた。 「ご主人様…♡あぅ…!」 「今日は俺のペットだ。いいな?」 「わんっ♡♡」 首輪を付けたカオルの姿は、流石の竹崎も興奮した。暫くぶりのカオルとのセックス。ほぼ禁欲状態だった二人は止められなかった… 「ご主人様…あぁんっ♡あっ、あっあっ…いく…いく…ぅっ…!!」 「主より先にイってんじゃねぇ…!!」 「あぅ…っんんぅ!!!…あぁあぁっ♡♡♡」 鎖を引っ張り、カオルの顔を上げさせる。 後ろから激しく突いて、中に射精して。ベッドに水溜まりが出来るくらいの射精と潮吹き。 「あぁ…♡ご主人様…♡♡」 「はぁ…っ…」 この夜は、もう何回したのかも忘れた。 「ご主人様。」 「…?」 「これ…名前入ってるんですね。」 思う存分に致した後、ベッド端に座り煙草を咥える竹崎とベッドに寝転がったカオル。 カオルは竹崎から貰った首輪を見ていた。 「…カオルって、書いてる。」 革製の首輪に、kaoru の文字が。 「…たまたまじゃねぇか」 「……嬉しいです。」 「良かったな」 「ありがとうございます。…最高の誕生日です」 すると、カオルは竹崎の背中に抱きついた。 「……なんだよ。」 「……ずっと、こうしていたい…。」 「…俺も…寝たい。」 「寝たい、じゃないですよ。ご主人様と、一緒にいたいんです。」 「無理だ」 「どうして!」 「…迷惑。」 「そんなことありませんよ…!1日3食の食事、掃除に洗濯、性欲処理付きですよ」 「とんでもねぇオプション付いてんな」 「……ご主人様…。」 活動休止期間なら良いのかなと少し思ってしまったが、竹崎は誘惑に負けないように、ダメだ と自身に言い聞かせた。 「…また倒れられても困るんだよ」 「…ご主人様、まだ分からないのですか?」 「何がだ」 「僕が倒れたのは、ご主人様に会えなかったから…」 「馬鹿野郎、ご主人様の世話で死にかけたんだろ」 「違います…!ご主人様と一緒に居た時、僕倒れたことありましたか?…無いですよね?」 「……ん。」 「そうでしょう?」 確かにそうだった。竹崎宅の合鍵をカオルに持たせていたとき、カオルが倒れたり体調を崩したりしたことは無かった。 「か、海外ロケも重なっただろ」 「それは前にもありましたよ。」 「…んーと…」 いよいよ竹崎も反論出来なくなった。 「…僕は、ご主人様がいないと生きていけないんです。本当、なんです。」 「はぁ………。分かったよ、好きにしろ。」 「本当ですか!やったぁっ♡♡」 1ヶ月だけ、という条件付きでカオルは竹崎の家に住み着いた。 カオルとの同居は、合鍵を持っていた時と変わらない生活だった。ただ、ひとつ変わったことがあるとすれば… 「…ご主人様…!お帰りなさ… んんっ♡♡」 「……お前が挑発したのが悪いんだぞ」 「…ご主人様…♡♡」 「ほら、口開けろ。」 「んぁ…♡♡」 打ち合わせなどといった用事が無ければ、暇なカオルが竹崎に送り付ける写真。 気に入った首輪を付けて、全裸で映り込むカオル。 〝早く帰ってきて〟 たったそれだけの文字と写真に挑発されて、竹崎は玄関を開けてすぐカオルを襲う。 もちろん、カオルは喜んで受け入れる。 「あぅ…♡ご主人様……!」 「もっと腰動かせよ……!」 「あぁんっ…!♡♡」 この1ヶ月だけは、公の場に出ないカオル。 竹崎も躊躇いなく、カオルの欲求に答えることが出来た。 「ごめんなさい♡…ご主人様…♡」 「…喋ってねぇで腰動かせって言ってんだ」 「はいっ…♡♡はぁっ……あぅ…んんっ…♡♡」 イきすぎて今にもおかしくなりそうなカオルに、もっとやれと尻を強く叩く。 「…ご主人様…♡あぅ…壊れちゃう…っ…♡♡」 正直、壊れそうなのは竹崎の方だ。 「…はぁっ…」 このままチンポまで持ってかれそうだな。 竹崎も意識が飛びそうだった。力が入らなくなり始めた手で、鎖を持ってカオルを操った。 そんなセックスばかりになった。何だか、徐々にヒートアップしているような気もしている。 「痛たた……」 「えぇっ、大丈夫ですか?!」 「誰のせいだと思ってるんだ……!!」 「ごめんなさいご主人様…♡」 「うるせぇ!煙草、持ってこい。」 「はいっ♡」 腰も悲鳴をあげてきた。 「…はぁ…今年で40だってのに…」 「まだ40ですよ?」 「俺を殺す気か」 「ご主人様が死ぬ時は、一緒に死にます」 「メンヘラ発言するなよ」 「僕は本気です」 「怖いって。火つけろ。」 「はい♡」 竹崎は煙を深く吸い込んで、細く吐いた。 「あ、あの……ご主人様…、これやりたいです。」 「んぁ?………っ!なんだよ、これ」 「フィストファックって知ってますか」 「……はぁ?」 カオルに突然見せられたのは、海外のエロ動画。 相手のアナルに拳がすっぽりと入っている。 「……えっ……??」 竹崎も少しは引いた。でも、カオルなら出来そうかと思ってしまった。 「これ…やらせてください…♡」 「入んねぇよ…。」 「ゆっくりやれば…入ります…♡」 「俺、手デカいって…」 「それがいいんです♡♡♡」 心做しか、カオルの瞳にハートが映って見えた。 「今?」 「少し、だけ。」 「…はぁ……」 ベッドサイドの引き出しからローションを取り出した。 「後ろ向け。」 「…♡♡」 カオルは嬉しそうにアナルを広げた。 さっきまでアナルセックスしていたせいで、まだ柔らかい。 「…血出ても知らねぇからな」 「血が出ても良いです…♡♡」 「…時間かかりそうだな」 ローションをたっぷり出して、ゆっくりとアナルを広げた。穴に入る指を増やしていく、2本、3本…、ここまではいつも通りなのだが、4本目から躊躇いが出てくる。 「…おい。今、何本入ってるか分かるか」 「さん…本…♡」 「はぁ。…もう一本、入りそうか」 「入れて…ください……♡♡」 ローションを追加して、ゆっくりと指を入れた。 「あ……あぅ……♡♡」 「……っ」 抵抗はあったものの、4本の指でじっくりと開発した。そのまま続けていると、隙間が出来てきた。 たっぷりと使ったローションが、カオルの中でぐちゅぐちゅと鳴る音だけが部屋に響く。 「……」 竹崎は集中しすぎて、喋るのも忘れていた。 カオルはクッションを顔を埋めて、息を荒くする。 「…本当に、入るのか?」 「大丈夫…です…♡い、入れて…ください…♡」 息を荒くして顔を赤くしたカオルが、竹崎に振り向いて微笑んだ。竹崎も息を飲んで、最後の指を入れた。 「んぅ……♡♡」 「すっげ……」 ローションの滑りに任せて指を入れ、そのまま、手首まで入ってしまった。というより、吸い込まれるような感覚だった。 「ご主人様……動かして…♡」 「お、おい……」 カオルは竹崎の顔を見つめ、腕を掴んで動かした。 「あぁっ♡♡これ…気持ちいい…♡♡すごい……すっごい……気持ちいい…♡♡んんぅ…♡♡」 耳まで赤くして、白目を剥いて喘いでいた。 「……。」 気持ちよさそうで良かった。竹崎の心の内は興奮より先に、安心が勝った。 「あ…あぁ……あぁっ…♡いく…イく…っ…♡♡」 いつもは叫ぶようにして達するカオルが、唇を噛んだまま射精した。といっても、もう精液なんて出ない。 「満足したか?」 「ぁい…♡♡」 「良かった。」 ゆっくりと拳を抜いた。手の開放感がすごい。 ローションでベタベタだけど。 カオルのアナルはぽっかりと開いていた。少し中まで見えるくらいに開いたままだった。 「すっげ…」 竹崎は慌てて手を拭いて、カメラに収めた。 「カオル。こっち向け。」 「んぅ……♡」 絶頂に達したばっかりの表情と、まだ欲しがるようなアナル。 「……撮れた。」 ぶっ飛んだようなプレイも悪くないな、そう思った。 それから二人は、特殊プレイを試し始めた。 緊縛に、浣腸、飲尿まで。 竹崎の抵抗感も無くなり始め、カオルに傷を付けない程度に、とそれだけ気を付けた。 今までで1番、凄く興奮した。 それは何故か。これまでに無いくらいに、カオルの反応が良かったから。表情に声色に、身体に。 物凄く色っぽくて、綺麗で、下品だけど下品じゃないというか…。 竹崎は夢中になって、カオルをカメラに収めた。 そんな日々が続いた。 ある日、カオルが竹崎にこんな話をした。 「ご主人様の時間を、僕にください……」 「は?俺の?…俺だって活動休止してぇってのに」 「…1日、2日くらい。」 「…有休使えってか?」 「えっと…その……」 「そこまでして、何するんだよ」 「旅行?…です」 「はぁ?!…っ!げほっげほっ…」 思ってたのと違う回答で、竹崎は噎せた。 「…活動休止しておいて、旅行するのか?…どこに」 「…せ、仙台…です」 「はぁ?!…よりによって、なんで仙台なんだ。旅行っつったら箱根とかだろ。」 「地元なんです」 「…知らなかった。」 カオルは宮城の仙台市出身。 大学進学と同時に上京して、それからはたまに地元へ帰るくらい。ここまで忙しくなってからは、中々帰ることも出来なかった。 「…なんで俺なんだよ、1人で行って来いよ。実家とかも行きてぇんじゃねぇのか?」 「……いいじゃないですか。地元、案内させてください。」 「まぁ…仙台なんて、行く機会ねぇからな」 「行ったこと無いですか?」 「ロケで1回だけ。」 「そうなんですね。…じゃあもっと仙台のこと知って欲しいです」 「…うーん…?」 竹崎は生まれも育ちも東京。東北なんて、この仕事を始めるまで全く縁がなかった。 「ご主人様と一緒に、行きたいんです。」 「……あぁ…そう…。」 くぅん、と今にも鼻を鳴らして甘える犬と同じような顔をしていたカオル。 ……負けた。 「全くよぉ…26歳にもなって保護者同伴かよ」 「本当ですか!」 「まだ何も言ってねぇよ!」 そうして、二人の仙台旅行が決まった。

ともだちにシェアしよう!