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第7話
カオルと会わないまま、数日、数週間、と経ったある日、竹崎は1つのSNSの投稿を見つけた。
カオルのファンと思われる女性の投稿だった。
〝💞カオル君 誕生日おめでとう💞活動休止なの辛いけど、元気になって戻ってきてほしい!ゆっくり休んでね🥺🥺〟
コメントと一緒に投稿されたのは、カオルのいつかの写真。これは確か、映画の広告だったかな。
「…ん、誕生日?」
竹崎はカオルの誕生日を調べた。
ウェブ検索で一番上に出てきた日付。
「今日なのか…。」
カオルの誕生日は4月上旬の今日だった。
嫌になるくらいに、一緒に過ごしてきたはずなのに知らなかった。おめでとう くらい言えばいいかな、言うと気まずいかな、竹崎はあれこれと考えた。
「ガキじゃあるめぇしよ…。はぁ…帰るか」
仕事の終わりに、寄り道して帰った。
「…ん?」
自宅マンションに着いて、エレベーターに乗っていた時、携帯が鳴った。
「……カオル…?」
画面にはカオルの名前。
「…はい。」
『…ご主人様。』
「なんだよ。ご要件は?」
『…会いたい…です…。』
「…活動休止中に、俺と会うなんて……」
「ご主人様……」
エレベーターから降りた時、竹崎の自宅前に座り込むカオルがいた。
「……はぁ。風邪引くだろ。」
「最近、暖かくなってきましたから。平気です」
「……バカは風邪引かないってか」
「…えへへ」
久しぶりに見たカオルは、何だか痩せた気がした。
元から痩せ型ではあったが、少し骨ばったような…?
「入れよ」
「ご主人様。」
「うぉっ」
部屋に入った瞬間、竹崎の胸にカオルが飛び込んできた。
「会いたかったです…ご主人様…♡」
「……そうか」
「誕生日くらい、ご主人様と一緒に過ごしたいんです。」
「…記念すべき日に、こんなおっさんと居るなよ」
「ご主人様がいいんです。」
「随分とご主人様に執着してますねぇ」
「ご主人様…」
「お座り。」
「えっ?」
突然の命令にカオルは目を開いた。
「聞こえなかったか?お座り。」
「……わん…」
犬のように座り込み、返事をしたカオル。竹崎は手に持っていた紙袋から何かを取り出した。
「……首輪…?」
「…26歳おめでとう」
「…ご主人様…これ…」
カオルの首に赤い首輪が付けられた。繋がった長い鎖は竹崎の手に握られていた。
「…お似合いじゃねぇか」
「……ご主人様…♡♡」
竹崎が帰り道に寄ったのは、この首輪を手に入れようとしたから。いつもベルトやネクタイで代用していたので、カオルの好きそうな本物の首輪を買った。
「かなりの大型犬ですねって言われちまった」
「えへへ…」
「180cmも超える大型犬だもんなぁ」
「わんっ♡」
カオルの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。ふと竹崎は、祖父母宅で飼っていた柴犬を思い出した。
「犬扱いされんのと、奴隷扱いされんの、どっちがいいんだ?」
「…両方…です…♡」
「難しいな」
犬扱いなら、ペットを飼うのと同じように愛してあげるのも出来るんだけど。
竹崎の心の奥底にそんな思いがあった。
「………」
「ご主人様…♡」
「……こちとら溜まってんだよ。お前もだろ?」
「はい…♡」
「違ぇだろ」
「わんっ…♡」
鎖を引っ張り、首輪に繋がれたカオルを引き寄せた。
「ご主人様…♡あぅ…!」
「今日は俺のペットだ。いいな?」
「わんっ♡♡」
首輪を付けたカオルの姿は、流石の竹崎も興奮した。暫くぶりのカオルとのセックス。ほぼ禁欲状態だった二人は止められなかった…
「ご主人様…あぁんっ♡あっ、あっあっ…いく…いく…ぅっ…!!」
「主より先にイってんじゃねぇ…!!」
「あぅ…っんんぅ!!!…あぁあぁっ♡♡♡」
鎖を引っ張り、カオルの顔を上げさせる。
後ろから激しく突いて、中に射精して。ベッドに水溜まりが出来るくらいの射精と潮吹き。
「あぁ…♡ご主人様…♡♡」
「はぁ…っ…」
この夜は、もう何回したのかも忘れた。
「ご主人様。」
「…?」
「これ…名前入ってるんですね。」
思う存分に致した後、ベッド端に座り煙草を咥える竹崎とベッドに寝転がったカオル。
カオルは竹崎から貰った首輪を見ていた。
「…カオルって、書いてる。」
革製の首輪に、kaoru の文字が。
「…たまたまじゃねぇか」
「……嬉しいです。」
「良かったな」
「ありがとうございます。…最高の誕生日です」
すると、カオルは竹崎の背中に抱きついた。
「……なんだよ。」
「……ずっと、こうしていたい…。」
「…俺も…寝たい。」
「寝たい、じゃないですよ。ご主人様と、一緒にいたいんです。」
「無理だ」
「どうして!」
「…迷惑。」
「そんなことありませんよ…!1日3食の食事、掃除に洗濯、性欲処理付きですよ」
「とんでもねぇオプション付いてんな」
「……ご主人様…。」
活動休止期間なら良いのかなと少し思ってしまったが、竹崎は誘惑に負けないように、ダメだ と自身に言い聞かせた。
「…また倒れられても困るんだよ」
「…ご主人様、まだ分からないのですか?」
「何がだ」
「僕が倒れたのは、ご主人様に会えなかったから…」
「馬鹿野郎、ご主人様の世話で死にかけたんだろ」
「違います…!ご主人様と一緒に居た時、僕倒れたことありましたか?…無いですよね?」
「……ん。」
「そうでしょう?」
確かにそうだった。竹崎宅の合鍵をカオルに持たせていたとき、カオルが倒れたり体調を崩したりしたことは無かった。
「か、海外ロケも重なっただろ」
「それは前にもありましたよ。」
「…んーと…」
いよいよ竹崎も反論出来なくなった。
「…僕は、ご主人様がいないと生きていけないんです。本当、なんです。」
「はぁ………。分かったよ、好きにしろ。」
「本当ですか!やったぁっ♡♡」
1ヶ月だけ、という条件付きでカオルは竹崎の家に住み着いた。
カオルとの同居は、合鍵を持っていた時と変わらない生活だった。ただ、ひとつ変わったことがあるとすれば…
「…ご主人様…!お帰りなさ… んんっ♡♡」
「……お前が挑発したのが悪いんだぞ」
「…ご主人様…♡♡」
「ほら、口開けろ。」
「んぁ…♡♡」
打ち合わせなどといった用事が無ければ、暇なカオルが竹崎に送り付ける写真。
気に入った首輪を付けて、全裸で映り込むカオル。
〝早く帰ってきて〟
たったそれだけの文字と写真に挑発されて、竹崎は玄関を開けてすぐカオルを襲う。
もちろん、カオルは喜んで受け入れる。
「あぅ…♡ご主人様……!」
「もっと腰動かせよ……!」
「あぁんっ…!♡♡」
この1ヶ月だけは、公の場に出ないカオル。
竹崎も躊躇いなく、カオルの欲求に答えることが出来た。
「ごめんなさい♡…ご主人様…♡」
「…喋ってねぇで腰動かせって言ってんだ」
「はいっ…♡♡はぁっ……あぅ…んんっ…♡♡」
イきすぎて今にもおかしくなりそうなカオルに、もっとやれと尻を強く叩く。
「…ご主人様…♡あぅ…壊れちゃう…っ…♡♡」
正直、壊れそうなのは竹崎の方だ。
「…はぁっ…」
このままチンポまで持ってかれそうだな。
竹崎も意識が飛びそうだった。力が入らなくなり始めた手で、鎖を持ってカオルを操った。
そんなセックスばかりになった。何だか、徐々にヒートアップしているような気もしている。
「痛たた……」
「えぇっ、大丈夫ですか?!」
「誰のせいだと思ってるんだ……!!」
「ごめんなさいご主人様…♡」
「うるせぇ!煙草、持ってこい。」
「はいっ♡」
腰も悲鳴をあげてきた。
「…はぁ…今年で40だってのに…」
「まだ40ですよ?」
「俺を殺す気か」
「ご主人様が死ぬ時は、一緒に死にます」
「メンヘラ発言するなよ」
「僕は本気です」
「怖いって。火つけろ。」
「はい♡」
竹崎は煙を深く吸い込んで、細く吐いた。
「あ、あの……ご主人様…、これやりたいです。」
「んぁ?………っ!なんだよ、これ」
「フィストファックって知ってますか」
「……はぁ?」
カオルに突然見せられたのは、海外のエロ動画。
相手のアナルに拳がすっぽりと入っている。
「……えっ……??」
竹崎も少しは引いた。でも、カオルなら出来そうかと思ってしまった。
「これ…やらせてください…♡」
「入んねぇよ…。」
「ゆっくりやれば…入ります…♡」
「俺、手デカいって…」
「それがいいんです♡♡♡」
心做しか、カオルの瞳にハートが映って見えた。
「今?」
「少し、だけ。」
「…はぁ……」
ベッドサイドの引き出しからローションを取り出した。
「後ろ向け。」
「…♡♡」
カオルは嬉しそうにアナルを広げた。
さっきまでアナルセックスしていたせいで、まだ柔らかい。
「…血出ても知らねぇからな」
「血が出ても良いです…♡♡」
「…時間かかりそうだな」
ローションをたっぷり出して、ゆっくりとアナルを広げた。穴に入る指を増やしていく、2本、3本…、ここまではいつも通りなのだが、4本目から躊躇いが出てくる。
「…おい。今、何本入ってるか分かるか」
「さん…本…♡」
「はぁ。…もう一本、入りそうか」
「入れて…ください……♡♡」
ローションを追加して、ゆっくりと指を入れた。
「あ……あぅ……♡♡」
「……っ」
抵抗はあったものの、4本の指でじっくりと開発した。そのまま続けていると、隙間が出来てきた。
たっぷりと使ったローションが、カオルの中でぐちゅぐちゅと鳴る音だけが部屋に響く。
「……」
竹崎は集中しすぎて、喋るのも忘れていた。
カオルはクッションを顔を埋めて、息を荒くする。
「…本当に、入るのか?」
「大丈夫…です…♡い、入れて…ください…♡」
息を荒くして顔を赤くしたカオルが、竹崎に振り向いて微笑んだ。竹崎も息を飲んで、最後の指を入れた。
「んぅ……♡♡」
「すっげ……」
ローションの滑りに任せて指を入れ、そのまま、手首まで入ってしまった。というより、吸い込まれるような感覚だった。
「ご主人様……動かして…♡」
「お、おい……」
カオルは竹崎の顔を見つめ、腕を掴んで動かした。
「あぁっ♡♡これ…気持ちいい…♡♡すごい……すっごい……気持ちいい…♡♡んんぅ…♡♡」
耳まで赤くして、白目を剥いて喘いでいた。
「……。」
気持ちよさそうで良かった。竹崎の心の内は興奮より先に、安心が勝った。
「あ…あぁ……あぁっ…♡いく…イく…っ…♡♡」
いつもは叫ぶようにして達するカオルが、唇を噛んだまま射精した。といっても、もう精液なんて出ない。
「満足したか?」
「ぁい…♡♡」
「良かった。」
ゆっくりと拳を抜いた。手の開放感がすごい。
ローションでベタベタだけど。
カオルのアナルはぽっかりと開いていた。少し中まで見えるくらいに開いたままだった。
「すっげ…」
竹崎は慌てて手を拭いて、カメラに収めた。
「カオル。こっち向け。」
「んぅ……♡」
絶頂に達したばっかりの表情と、まだ欲しがるようなアナル。
「……撮れた。」
ぶっ飛んだようなプレイも悪くないな、そう思った。
それから二人は、特殊プレイを試し始めた。
緊縛に、浣腸、飲尿まで。
竹崎の抵抗感も無くなり始め、カオルに傷を付けない程度に、とそれだけ気を付けた。
今までで1番、凄く興奮した。
それは何故か。これまでに無いくらいに、カオルの反応が良かったから。表情に声色に、身体に。
物凄く色っぽくて、綺麗で、下品だけど下品じゃないというか…。
竹崎は夢中になって、カオルをカメラに収めた。
そんな日々が続いた。
ある日、カオルが竹崎にこんな話をした。
「ご主人様の時間を、僕にください……」
「は?俺の?…俺だって活動休止してぇってのに」
「…1日、2日くらい。」
「…有休使えってか?」
「えっと…その……」
「そこまでして、何するんだよ」
「旅行?…です」
「はぁ?!…っ!げほっげほっ…」
思ってたのと違う回答で、竹崎は噎せた。
「…活動休止しておいて、旅行するのか?…どこに」
「…せ、仙台…です」
「はぁ?!…よりによって、なんで仙台なんだ。旅行っつったら箱根とかだろ。」
「地元なんです」
「…知らなかった。」
カオルは宮城の仙台市出身。
大学進学と同時に上京して、それからはたまに地元へ帰るくらい。ここまで忙しくなってからは、中々帰ることも出来なかった。
「…なんで俺なんだよ、1人で行って来いよ。実家とかも行きてぇんじゃねぇのか?」
「……いいじゃないですか。地元、案内させてください。」
「まぁ…仙台なんて、行く機会ねぇからな」
「行ったこと無いですか?」
「ロケで1回だけ。」
「そうなんですね。…じゃあもっと仙台のこと知って欲しいです」
「…うーん…?」
竹崎は生まれも育ちも東京。東北なんて、この仕事を始めるまで全く縁がなかった。
「ご主人様と一緒に、行きたいんです。」
「……あぁ…そう…。」
くぅん、と今にも鼻を鳴らして甘える犬と同じような顔をしていたカオル。
……負けた。
「全くよぉ…26歳にもなって保護者同伴かよ」
「本当ですか!」
「まだ何も言ってねぇよ!」
そうして、二人の仙台旅行が決まった。
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