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第2話 蓉※

腹がいっぱいになると自然に眠くなる。睡眠欲が強くなり、平気で10時間以上は寝ることになる。途中起きることもなく、ひたすら寝ているだけだけど、目覚めた瞬間の幸福度はハンパない。 思いっきり睡眠欲を使い果たし、ぱっちりと目が覚めた後は、性欲が襲ってくる。 蓉に恋人はいない。 恋人を作る気にもならない。 性欲が強すぎるため、相手に合わせてセックスをするのが苦痛であり、苦手だった。 なので、ひたすらひとりでオナニーに明け暮れる。右手で扱き、とりあえず射精した後は続けて玩具で遊ぶことになる。 ローションでグチョグチョになった玩具にペニスを突っ込み、玩具をカポカポと揺り、またひたすら扱きあげ射精する。 この右手、玩具のローテーションを数回繰り返し射精するが、最近はそれだけでは刺激が足りず、後ろの穴にバイブを突っ込みながら、ペニスを扱くのがたまらなく好きになり、ハマっていた。 蓉は、ハードなオナニストとなっていた。 ひとり暮らしを決意したのも、実家でこっそりとオナニーが出来なくなってきたからという理由がある。 玩具のコレクションや、ローションが増えていく。バイブの音も家族に知られないかと、気になってしまう。気兼ねなくオナニーが満喫出来るのは、ひとり暮らしだろうということに気がつき、この部屋に引っ越してきた。 「…くっ、ああ、いきそう…」 後ろの穴にバイブを突っ込みながら、蓉は射精しそうになった。一度この遊びを覚えてしまってからは、バイブが無いと物足りないと感じるほどだ。 ベッドの周りがティッシュだらけになっているのが目に入った。オナニーをしていても意外と自分は冷静なんだなと、頭の隅で考えている。 ああ…いきそう、とラストスパートで、後ろに突っ込んでいるバイブを強にしていたところに、インターホンが鳴った。めっちゃタイミングが悪い。 ピンポン…ピンポーン…ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン… 無視をしていても、ひたすら鳴り響くインターホン。宅配は頼んでいないし、知り合いも来ることはない。セールスか新聞屋に決まってると思い、また無視を決め込む。 だが、ピンポーン、ピンポーン…と、その後もしつこく鳴り響いている。 もう少しでフィニッシュだったのに、インターホンのおかげでイケなくなったと、苛立つが、かなりしつこいので、居留守は使えないらしい。玄関越しに一言喋らなければ帰ってくれなさそうである。ひとり暮らしは初めてであるが、こんなこともあるんだなと学ぶ。 バイブを引っこ抜き、電源をOFFにする。ローションでドロドロになった手をタオルで拭き、バイブとタオルをポイっとベッドの上に投げ捨てた。 ドアを開けるつもりはないが、いちおう部屋着のスウェットとTシャツを着て玄関に向かう。 「…はい」と、不機嫌極まりない声で蓉が応えると、隣に越してきた者だという声が返ってきた。そういえば昨日からガタガタと、隣から音がしていたのを思い出す。 隣人はしつこい奴かと、ため息をつくが、この場合どうしていいかわからない。ひとり暮らしも初めてであれば、隣人との接し方も初めてであり、よくわからない。 「あのー、昨日隣に越してきました。ご挨拶させて下さい。よろしいでしょうか…」 丁寧な口調だったため、無愛想にしているのが申し訳ないと咄嗟に考え、玄関のドアを薄く開けてしまった。 「あっ!先輩!」 「うわぁぁ!海斗(かいと)?!」 長身の男が狭いドアの隙間を潜り抜け、満面の笑みで部屋にズイッと入ってきた。 「やっぱ、ここに住んでたんだ。先輩、元気だった?ねぇ、大丈夫?」 「か、か、海斗?なんで?ここ?はあ?」 ズカズカと玄関から部屋に入りながら、お邪魔しまーすと言い、紺色のバスケットシューズをポイポイと玄関で脱ぎ散らかして、あっという間に海斗は部屋に入ってきた。 海斗は背も高ければ、体格もある男だから「やめろ!やめろ!」と、蓉が体を張って抵抗しても、ヒョイヒョイっと上がり込んでしまった。 「あれ〜、ゴミ出ししてないの?めっちゃ溜め込んるじゃん。キッチンは使ってないんだね。掃除しよっか?」 「おい!やめろよ、マジで。勝手に触るな!お前、何しに来たんだよ!掃除はしなくていい!」 イケメンで優しく将来有望と、会社のみんなから言われている野村(のむら)海斗(かいと)が、何故か突然家に押しかけてきて、蓉のキッチンを掃除しようとしている。何がなんだか理解不能だ。 蓉と海斗は、株式会社モンジュフーズで働いている同僚だ。 モンジュフーズは、都内を中心に店舗を展開するスーパーマーケットチェーンである。 モンジュフーズマーケットは、品揃えにこだわり、国内外で厳選した食品やオリジナルブランドの商品を多く扱っている。 お値段は少々高めに設定されているため、巷では『高級スーパーマーケット』と呼ばれており、店舗によっては芸能人やセレブが来店するとも言われ、世間では今、大注目のスーパーであった。 その会社の本社勤務をしている二人は、同僚…いやそんな言葉よりも、もっと仲が良い仲間…まあ、友達が一番妥当な言葉だろう。いつもつるんでるし。 海斗は営業第ニ部に所属し、蓉は経理部に所属していた。 部署は違うが二人の交流は、海斗の兄がキッカケである。 海斗の兄である野村(のむら)陸翔(りくと)と、蓉が大学の同級生であり、その兄の陸翔も同じ会社の営業第一部に勤務している。兄を通じて海斗と蓉は仲良くなり、つるむようになっていた。 「先輩、いつ引っ越ししたの?最近?へぇ…間取りが違うんだね」 海斗は、キッチンから奥の部屋をキョロキョロと見渡している。 「何でお前がここにいるの?とりあえず一回帰ってくれ!」 そうは伝えるが、海斗は一向に帰る気配を見せない。 「誰もいない?一緒に住んでる人いない?」 キッチンから部屋の中心まで、またズカズカと海斗は進んで行ってしまう。キッチンといってもワンルームなので部屋は仕切りもなく繋がっている。 「うわああああ!ダメ!そっちダメ!」 バイブやローションがそのままベッドにあるのを忘れていた。 「ええーっ!」 海斗がひっくり返るくらいの大声を、ベッドの前で上げていた。 ほらな、そっち行っちゃダメだって言ったのに…

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