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第2話

養護施設に戻った俺が三日三晩熱と嘔吐に苦しんだ事を知らない親父は一ヵ月後に何食わぬ顔で養護施設に現れた。 退所ではなく外出の申請をしたと聞き、また売られるのだと悟り、道具箱からカッターを持ち出しこっそりとポケットに忍ばせた。 無言のまま歩く親父の背中を見ながら、どうやって客を退散させるかを考えた。 考えて……。 考えて……。 そして歩道橋を下りる時、ふと気付いた。 親父を突き落とせばホテルまで行かずに済むのではないかと。 ポケットの中で握り締めていたカッターを離すと息を吸い込み。 そして薄汚れた小さな背中を押した。 歩道橋から落ちた親父は悪運強く生きていた。 俺を売った事を知られるのを恐れてか医者には足を滑らせて落ちたと嘘を吐き、事件を事故と処理した。そして殺されかけた恐怖からかその後養護施設に現れる事はなかった。

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