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第4話
対面から一ヶ月が過ぎても親父の三度目の死を迎えられず、胸に重いシコリを抱え単調な日々を繰り返していると、それは訪れた。
インターフォンが鳴り、覗き窓を見ると左側の眉から目じりにかけてと右の顎に切り傷のある一見して堅気には見えない四十前後の男が立っていた。
関わる事を避けるべく居留守を使う。すると男はドアノブに何かを下げて隣の部屋に引っ込んだ。
嫌がらせだろうかとそっとドアを開けた瞬間。勢い良く隣室のドアが開いた。
「やっぱり居るんじゃねーかよ!」
男の剣幕に慌ててドアを閉じるが、鍵を掛けるより早くドアを抉じ開けられ極悪な笑みを浮かべる男に捕まった。
「金ならない」
「誰が金の話しなんかしたよ」
「署名捺印もしない」
「別にいらねーよ」
なら何の用だといぶかしんでいると男は紙袋を差し出した。
「引越し蕎麦だ」
受け取らずにいると男は眉をへの字に曲げた。
「今の若い奴は引越し蕎麦なんて知らねーか?」
「いや、知ってるけど……」
バカにするなと視線で訴えると、男は口角を上げで笑った。
「薬味が欲しかったら分けてやるから遠慮なく言えよ」
犯罪者にしか見えない微笑に。
「遠慮します」
端的に答えて、ドアを閉めた。
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