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第6話

6.夜はこれから 千早に借りた部屋着に着替えてから電話を掛けたが時刻はまだ午後2時半を回ったところで、長年小さな工務店で事務員をしている母親は忙しいのか電話に出なかった。 数生の受験に関しては母親もやきもきしていたようだったから本当は直接話をした方がいいんだろうなと思ったが、仕方ないので【ごめん、今日は千早んちに泊まることになったから夕飯要らない】とメッセージを送っておいた。 「母さんがお金置いてったし、宅配でがんがんピザでも取ろうぜ、数兄」 千早が万札を指で挟んでヒラヒラさせる。 「すげえ。おばさん、太っ腹じゃん」 「全部使うなって釘刺されたけどね。数兄の合格祝いだって言ったら許してくれるだろ」 「やった」 「…と、言うわけで、夜までまだ長いよな、数兄」 そう言うと千早は床に座っていた数生の腕を取ってベッドに引いた。 「え、まだヤんの」 「『後でまたゆっくりしよ』って言っただろ」 横たわると、後ろからギュッと抱きしめられ、うなじに唇を付けられる。 「数兄、自分では気づいてないだろうけどすごくいい匂いするよ」 「…何、いい匂いって。さっき風呂入ったからじゃね?」 「違う。体臭なのかな。焼き上がる直前のパンみたいな匂い…」 「それっていい匂いかあ?」 「うん、すごくいい匂い。昔から好きなんだ」 そういえば子供の頃から千早はよく背中に抱きついて来たな、と数生は思い出した。匂いを嗅いでいたのかこいつめ。 すんすんと後ろで鼻を動かしていたかと思うと、いつしか千早の片手は下着の中に滑り込み、もう片方の手も部屋着の中に入って来て、ねちっこい動きで肌を撫でまわし始めた。 「…なんか、お前って手練れだよな…。本当に女の子とヤんなかったのかよ?」 「ヤるわけない。中学の頃、数兄が彼女としちゃうかも、と思って焦ってさ。そのとき付き合ってた子とヤろうとしたこともあったけど…キスしかしてないって言ったろ?」 「ほんとにしてなかったんだ」 「疑ってたの?」 「別に…。ただお前、なんか慣れてる気がして…」 「慣れてなんてないよ。今だってドキドキしてるし…。数兄に触りたいし、気持ちよくなってほしいから必死なんだ。俺の初めてはキス以外は全部数兄だから、安心して」 「安心してって…」 そんな話をしながらも千早の手が数生のペニスをゆっくりと擦ってくるので、徐々にまた硬さが戻ってきてしまう。もう片方の手は乳輪を撫でたり突起を摘んでは押し込んだりしていて、会話しながらもピリピリと電気が走るような快感に包み込まれる。 「数兄はどこもかしこも弱いね。乳首ももう勃ってる…」 「だからっ、恥ずかしいからそういうこと言うなよ」 「ふふっ」 笑いながらも手を止めない千早にどんどん数生はまた追い詰められていく。 「あ、あっ…んっ…はぁっ…」 「数兄、声、エロい…。もっと聞かせて…」 「お前ってほんと性格悪っ…」 「数兄、かわいい…」 「可愛いって言うなってば」 「だってそうだもん」 ペニスを掴んでいた手がボトムスと下着をずり下ろすと、後ろでごそごそと気配がして、何かのパッケージを開けるような音がした。しばらくするとぬるぬるした指先がぬち、という小さな音とともに後孔に入ってきた。 「柔らかくなったね、ここ」 「そりゃ…あんなに出し入れしたら…」 「もうぐずぐすだよ、数兄」 やらしい物言いばかりしやがってと頭に来つつも反面、むらむらと気持ちが煽られていく。 指が2本、3本と増える気配がして、すっかりそれを受け入れている数生の中に潜り、敏感なところをまた探し当てた。 「んあっ、そこ…っ、ダメだって…」 ぐ、ぐ、と押され、指の腹で愛撫されて、ほんのさっき何回かいったはずなのに、またうずうずとした射精の前の蠢きを身体の中に感じてしまう。 「ここの場所、もう覚えた。数兄、気持ちよくしてやるよ…」 「あ、あっ…っ」 二本の指でささやかに膨らんだ部分を挟み込むようにされ、内臓を触られているような不快感とそれを遥かに超えるほどの快感がないまぜになって渦を巻き、数生の目尻には涙が滲んだ。 「…数兄、よかったね。俺と付き合って」 「なんでだよっ…」 「だって、数兄、女の子と付き合ってたらたぶんこんなことしてくれないよ?数兄の好きなタイプの子ってかわいいけど控えめな子ばっかりだったし…きっとこんなとこ触ったり、すぐにはちんこ舐めたりもしてくれないと思う」 「…フツーの女の子なんてそんなもんだろっ…」 「うん。だから、俺との方が気持ちいいでしょ?」 「女の子とヤったことないから分かんねえ」 悔し紛れに数生はそう答えた。 「女の子とヤりたい?」 「…もう、お前としかできないかもって言ったろ」 「ねえ、数兄がもししたかったら…今度、俺のに挿れてもいいよ」 「え…」 「俺の処女、やるよ」 「処女って…お前なあ…。あっ……」 そこを挟んでは撫でていた千早の指の動きが激しさを増し、勢いよく出し入れが始まって、会話どころでは無くなった。 そして、それがふと抜かれると、後ろにまた千早のものが挿入ってくる感触があった。ゴムを嵌めたようで、バスルームで入れられたときとは若干違った圧迫感を感じる。 「んんっ…!」 「ほら、すぐ入った。もう数兄のここ、俺の形覚えてる…」 「くそっ…やらしいんだよ、お前は…」 しかし、痛みがそこそこあった先ほどとは違って本当にその大きさに調整されてしまったのか、千早のペニスはすっぽりと数生の中に収まったようだった。 抽挿が続くなか胸を揉まれて摘まれ、男のそんなとこ触って何が楽しいのかねとぼんやりと脳の片隅で思うものの、度重なる刺激によってどんどん数生の陰茎も熱さと硬さを増してゆく。 引いてまた深く入れて、という動作が繰り返される度に千早の括れた部分がまたもや数生のあのスイッチのようなところを擦り、先っぽからまたぽたぽたと透明な液体が溢れ始めた。 堪らず、乳首を弄っていた千早の手を取ると、手を重ねて自分のものを握らせた。 「数兄のえっち…」 「ンッ……。どっちがだよっ…」 ぬるぬると千早の舌がうなじを生え際まで舐め上げ、ゾクゾクと鳥肌が立つ。 ああ、確かに。ユリには悪いし、比べることなんて最低だけど、きっとユリと付き合っててもこんな行為はできなかっただろうな、と思う。 きっと完全に受け身の女の子を相手にどうやったら悦ばせることができるのか分からなくて四苦八苦して、挿入して射精はできても深い快感なんて得られなかっただろう。 「…っ、でも、俺、気持ちいいからお前のこと好きになったわけじゃないから…」 つい呟きが口から漏れ出た。 「俺のこと、好きになってくれたのならそれでいいよ、数兄」 ちゅう、と音がして唇がうなじに吸い付く。 「あっ、あっ、千早、あんまりやると痕付くだろ?!」 「大丈夫だよ、シャツで隠れて見えないから」 「母ちゃんにバレたらどうすんだよ…」 「『千早に付けられた』って言っといて」 「バカやろ…」

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