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13.
「あらあら、そんなにも紫音君が好きなの」
むぶぶっと、頬を膨らまし、しかし、空気が抜けたような音を出して、怒っている"あかと"に、面白そうに笑っていた。
好き。
幼稚園の子達に言われたことがあった。
けれども、その時には感じなかった、胸奥深くまで熱く、高鳴った。
「しおんくん、とんとんして!」
手を取られ、自分の腹部に置いた。
そう促され、さっき母がやっていたようになるべくゆっくりと優しく叩いてみせると、すぐにつぶらな瞳がうとうととし始めた。
瞼の回数が減っていくと、フッと瞼を閉じた。
小さな口をむにむにと動かし、ゆっくりと胸を動かしている"あかと"に、小さく息を吐くと、不意に頬が緩んだ。
「⋯⋯紫音君、ありがとうね。紫音君も一緒に寝てていいからね」
「え⋯⋯あ⋯。はい」
にっこりとした母親が、台所へ向かう姿を見るのをそこそこに、穏やかに眠る小さな彼を見ていた。
時折、聞き取れない寝言のようなことを言うのを、声を出さずに笑っていた。
この子は、どんな夢を見ているんだろう。普段も楽しそうにしているから、きっと夢でも楽しいのを見ているのだろう。
寝るのも嫌になる自分とは違って。
コロン、と"あかと"の隣で横になり、トントンとしながら、彼のことを見続けているうちに、紫音の瞬きがゆっくりとなっていった。
"あかと"の母親に、一緒に寝てもいいと言われたが、寝るのが怖い紫音は、どうにか抗おうとしていたが。
あかとくんの隣に寝たら、怖い夢は見ないのかな。
そう思った途端、素直に瞼を閉じた。
"あかと"と一緒に、砂場で砂がなくなってしまうのではないかと思うぐらいの大きな山を一生懸命作っていた。
服を汚したら怒られると頭では分かっていたものの、"あかと"が抱えきれない砂を持って、大げさに山に叩きつける度に、こちらにまで飛んでくるものだから、気にしている場合じゃなかった。
だが、顔を汚してまで楽しそうに笑う"あかと"に、そんなことはささいなことだと、一緒になって笑い合っていた。
そんな幸せな夢をずっと見続けたいと、起きた"あかと"を見て、心の底から思うのであった。
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