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14.
酷く苦しい。
暑くて、汗がびっしょりとかいているのに、とても寒い。
布団に丸まり、けれども、隣で嬉しそうに眠る"あかと"の分を取ってしまわないよう、気を遣いながらも。
「んん⋯⋯んー⋯。しおんくん⋯?」
眠たい目を擦りながら、こちらのことを少しの間見ていた。
まだ現実と夢の区別がつかないみたいで、昼食の後の昼寝から起きた後も、こうして人のことを見ていた。
「しおんくん、おっはよーっ!」
ぱぁっと目を輝かせて、元気よく挨拶してくれた。
朝から"あかと"の眩しいくらいの笑顔を見られるのはとても嬉しい。嬉しい、と普段なら思うはずなのだが、頭に直接響くほどに痛い。
「しおんくん、おーきてー、おきがえ、しよ!」
ゆさゆさと紫音のことを揺する。
その時、昨日の風呂での出来事を思い出す。
両親曰く、いつもなら率先として自分で服を脱いだり、袖を通せていないながらも着ようとするらしいのだが、逐一紫音に甘えてくるのだ。
ここまで自分のことを慕ってくるなんて、まだ指で数えられるほどしか会ってないのに、そんなにも初めて会った時、紫音と遊んで楽しかったのだろうか。
「おーきーがーえっ!」
「⋯う、うん」
気だるい体を、"あかと"に引っ張られる形で無理やり起こす。
バンザイをしている"あかと"を時間をかけながらも脱がしてやり、「これね、あかとのすきなふく!」と嬉々として教えてくれるのを、力なく笑い、それを着させる。
「しおんくん、ありがと!」
「どう、いたしまして⋯」
熱い息を吐き、どうにか返す。
ひとまず、"あかと"の着替えは出来た。自分のはいいから、今は少しでも横になっていたい。
だから、「あかとくん。ごはんたべにいってね」と告げようとした時。
「しおんくんは、あかとがやる!」
はーい! と手をめいっぱい上げる"あかと" に、急にどうしたものかと目を丸くしていると、得意げに笑った。
「おきがえだよー!」
「⋯わっ」
突然、無邪気に布団を捲られ、虚を突かれた紫音の服を引っ張った。
「ぬ、いましょーねー」
「あ、あかとくん⋯っ、うれしいけど、きょうはいいよ⋯⋯」
「むぅ〜っ! やっ! やるの!」
可愛らしい眉を吊り上げて、怒った。
少しでも気に入らないことがあると、機嫌損ねてしまう"あかと"に頭を抱えた。
困った。しかし、彼がそうしたいなら、そうさせてやっても別に構わなくはないと思うが。
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