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酷く苦しい。 暑くて、汗がびっしょりとかいているのに、とても寒い。 布団に丸まり、けれども、隣で嬉しそうに眠る"あかと"の分を取ってしまわないよう、気を遣いながらも。 「んん⋯⋯んー⋯。しおんくん⋯?」 眠たい目を擦りながら、こちらのことを少しの間見ていた。 まだ現実と夢の区別がつかないみたいで、昼食の後の昼寝から起きた後も、こうして人のことを見ていた。 「しおんくん、おっはよーっ!」 ぱぁっと目を輝かせて、元気よく挨拶してくれた。 朝から"あかと"の眩しいくらいの笑顔を見られるのはとても嬉しい。嬉しい、と普段なら思うはずなのだが、頭に直接響くほどに痛い。 「しおんくん、おーきてー、おきがえ、しよ!」 ゆさゆさと紫音のことを揺する。 その時、昨日の風呂での出来事を思い出す。 両親曰く、いつもなら率先として自分で服を脱いだり、袖を通せていないながらも着ようとするらしいのだが、逐一紫音に甘えてくるのだ。 ここまで自分のことを慕ってくるなんて、まだ指で数えられるほどしか会ってないのに、そんなにも初めて会った時、紫音と遊んで楽しかったのだろうか。 「おーきーがーえっ!」 「⋯う、うん」 気だるい体を、"あかと"に引っ張られる形で無理やり起こす。 バンザイをしている"あかと"を時間をかけながらも脱がしてやり、「これね、あかとのすきなふく!」と嬉々として教えてくれるのを、力なく笑い、それを着させる。 「しおんくん、ありがと!」 「どう、いたしまして⋯」 熱い息を吐き、どうにか返す。 ひとまず、"あかと"の着替えは出来た。自分のはいいから、今は少しでも横になっていたい。 だから、「あかとくん。ごはんたべにいってね」と告げようとした時。 「しおんくんは、あかとがやる!」 はーい! と手をめいっぱい上げる"あかと" に、急にどうしたものかと目を丸くしていると、得意げに笑った。 「おきがえだよー!」 「⋯わっ」 突然、無邪気に布団を捲られ、虚を突かれた紫音の服を引っ張った。 「ぬ、いましょーねー」 「あ、あかとくん⋯っ、うれしいけど、きょうはいいよ⋯⋯」 「むぅ〜っ! やっ! やるの!」 可愛らしい眉を吊り上げて、怒った。 少しでも気に入らないことがあると、機嫌損ねてしまう"あかと"に頭を抱えた。 困った。しかし、彼がそうしたいなら、そうさせてやっても別に構わなくはないと思うが。

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