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「あかと、くん⋯⋯しずかに、できる、よね?」 「うん、うんっ! できる!」 「じゃあ、ぼくと⋯いっしょに、いようか⋯⋯」 「⋯⋯! うんっ!」 泣くことをすっかり忘れ、目が潤んでいたのもあり、いつにも増してキラキラとした目を向けて、嬉しそうにしている"あかと"に、弱々しく撫でた。 「ごめんなさいね。頃合いを見て、あかとを連れて行くから」 「⋯⋯いえ⋯⋯だいじょ⋯です」 「紫音君、無理はしないでね。あかと。うるさくしないで大人しくしているのよ?」 「はぁーい!」 一気に上機嫌となり、これでもかと大声を上げた。 「⋯⋯全く、言ったそばから」と頭を抱えながらも出て行った。 その後ろ姿をぼんやりと眺めていると、「しおんくん」と無邪気に呼ばれた。 「あかとねーあかとねーしおんくん、しゅきだよ」 突然言われた言葉に、熱のせいもあってすぐに理解ができなかった。 今、無邪気に笑うこの子は何て言った? 「あかとくん、いま──」 「あとねー、ぱぱもままも、きゅーきゅーしゃも、パトカーも、あとあと⋯いっぱいしゅき!」 頭に星が当たったような感覚がした。 "あかと"の言う「しゅき」は、そういうことなのか。苦笑した。 「あかとくんは⋯いっぱい、⋯⋯すきがあるんだね⋯⋯」 「うんっ! しゅきしゅきー!」 ぴょんぴょんとベッドの上を飛び跳ねた。 将来"あかと"の部屋となるらしい部屋に置かれたベッドは、気の早すぎる両親が買った物らしい。 「ちょうど紫音君の寝られる所があって良かった」と喜んでいたが、紫音にとっては、ここに寝るべき相手よりも先に使って良かったのかと思ってしまう。 とはいえ、紫音と寝たいと駄々をこねて一緒に寝たから、結果的にいいともいえよう。 「しおんくん、おっねつ、つらい?」 「ん⋯⋯、でも、あかとくんが、いれば⋯⋯つらくないよ⋯」 「ほんとー? あかと、いいこー?」 「うん⋯⋯いいこ⋯⋯」 ぺたんと座り込んで、首を大きく傾げる可愛い仕草もあって、重だるい手を無理やりにでも上げて、撫でたくなった。 途端、"あかと"は破顔した。 「えへへ、なでなでしゅきー」 きゃっきゃと嬉しそうにする彼を見ていたら、熱による辛さも苦しさも忘れて、自然と頬が緩んでいた。 熱の時に、一瞬だけでもそう思えてしまうだなんて、本当にこの子はすごいと思う。 いつの間にか、紫音にとっては知らないテレビ番組の話を一生懸命する"あかと"の声が遠くに聞こえ、寝に入ってしまうのであった。

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