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ニュース程度しか観たことがなく、逆にテレビ番組はそれだけかと思っていた紫音は始め、自身の体を張って敵だという相手に拳や蹴りを入れたり、武器を使って戦うというのがいまいち理解が出来てなかった。
けれども、どんなに傷だらけでも仲間と共に立ち向かったり、不利な状況でも決して諦めない姿に心が打たれてしまった。
人々の音を奪う敵から取り返すという設定も、"あかと"が仁王立ちをして、全力全開で応援しているバンバンジャーの武器は、楽器モチーフのようで、その中に紫音と同じヴァイオリンを持っている人がいた。
きっとそれのことだろう。
「しおんく⋯にぃ! たたかう? びゅーん、ばびゅーんって!」
「うーん⋯⋯。たたかうことはできないけど、ひくことはできるよ」
「ひいて!」
身を乗り出して、らんらんと目を輝かせる可愛らしいお願いに断るわけがなく、「いいよ」と弾く体勢になった時。
「あかと! こんなところにいた!」
上から慌ただしく駆け下りてきた母親が、"あかと"のことを抱き上げた。
「前に階段から落ちて怪我をしたの誰?!」
「むー! しおんにぃのみたいー!」
「ダメでしょ! 紫音君の邪魔しちゃ! ほら、上に行くよ!」
「やーだーぁ!」
母親から逃れようと、力強く手で押しのけようとするが、母親は落とさないようにとも含めて、しっかりと抱きこんでいるためか、無駄な抵抗だった。
それでも、下りたがっている"あかと"に、いつまでもやっていそうでそのうち落ちてしまうのではと思い、「じゃまではないです」とやや大きい声で言った。
紫音が大きな声で言うのは、"あかと"が紫音の名前を尋ねた時に、何故かはしゃぐものだから、つられて笑ってしまった時以来で、珍しいと思ったのだろう、ほぼ同時に見られた。
「え⋯⋯、ああ、いいのよ。紫音君、いつもあかとのワガママに付き合ってくれているのだから。気を遣わなくていいの」
「⋯⋯ぼくが、あかとくんといっしょにいたいのです。だめでしょうか」
「だめ、じゃないけどね⋯⋯」
昼食を共にした際に、紫音は客なのだから、気を遣わなくていいと言った時のような、困った顔を見せていた。
と、その時、気が緩んでいたのだろう、「しおんにぃ!」と母の手から離れた"あかと"が、その勢いのまま紫音に飛びついた。
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