23 / 39
23.
「「あかと、誕生日おめでとうー!!」」
ケーキに灯されたロウソクに、"あかと"が一生懸命吹き──さりげなく両親が消すのを手伝いながらも──、消した瞬間、盛大な拍手と共に祝いの言葉を告げる。
そんな両親を見てなのだろう、笑って、拍手の真似をしていた。
ここに自分はいていいのだろうか。
一緒に笑みを見せながらも、心の中では疎外感を覚えた。
"あかと"の誕生日を知ったのは、当日。
「掃除をするから、二階に行っててもらえる?」と告げられたのは、昼食前。
数日朝田家の世話になっているから、大体の一日の流れが分かってきたが、時間帯的に昼食の準備をしてくれている最中だ。
それなのに、今日は掃除をすると言うものだから、始め不思議に思ったが、疑問を口にしても意味がないと判断し、「ごはんー!」とぐずる"あかと"を引き連れて二階へと行った。
そして、おもちゃでどうにか気を逸らそうとしている時、「二人とも降りてきて」と呼ばれて、降りていったら、テーブル上にケーキが置かれていたのだ。
"あかと"が好きだというチョコレートケーキを、最初は"あかと"にと切り分けていく。
「けーき! けーき!」
目の前に置かれた瞬間、"あかと"は体を揺らし、全身で喜んでいると、「全くこの子は」と口でこそ呆れていたが、笑顔を崩していなかった。
誕生日って、こういうものなの。
幼稚園で同じ誕生月の子と写真撮影はしたことがあったが、自分の家では、今目の前で行なわれていることを一度もしてもらったことがなかった。
だから、変な話、自分の誕生日を知らないようなものだった。
「はい。紫音君、チョコは大丈夫?」
「あ、は⋯はい⋯⋯」
"あかと"母が切り分けてくれた皿の上に乗せられたケーキが、目の前に置かれる。
紫音の反対側では、口いっぱいに頬張り、にこにこと笑う"あかと"が目に映る。
自分の誕生日ではないのに、食べてもいいのかと、その笑顔から無意識的に目を逸らすと、ふとを"あかと"の皿の上に、ぐちゃぐちゃになったケーキの横に、『あかとくんたんじょうびおめでとう』と書かれたネームプレートを見つけた。
あかと。
「あの⋯⋯あかとくんのなまえって、ひらがななんですか?」
「え? ああ! ふふ、違うのよ。これは、あかとが読みやすいようにと、全てひらがなにしているからだと思うの」
ともだちにシェアしよう!