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「こうなってくると、もうどっちがお兄ちゃんなんだろう」 「あかと、ちがう! しおんにぃ! にーになの!」 うがー! とくすくす笑う母親に対して怒る朱音に、「分かったから、怒らないの」と頭を撫でたが、小さな両手で押しのけようとしていた。 「全く、もう⋯。紫音君のことをお兄ちゃんと呼ばせて。紫音君のこと、本当のお兄ちゃんのように思っているわね、この子は」 「へへ⋯⋯」 「しおんにぃ、ゔぁーれっとだもん!」 「そうだよな、ヴァイオレットだもんな」 「んっ!」 父親の言葉に満足げに大きく頷くと、また一緒に食べよと、催促してくる。 「うん、ありがとうね」 自分の方へ引き返し、「いただきます」と言って、フォークで一口サイズに切り分けて口に運んだ。 ほぼ甘さを占めつつも、ほんのりと苦みがいい具合に引き立たせてくれている。 初めて味わうものだ。顔が驚きと自然と綻ぶのを感じる。 こういうのはきっと──。 「⋯⋯おいしい」 心からそう思えた。 口の中からその味が消えてしまうのが惜しくて、次から次へと口に入れていった。 美味しい。食べるものがこんなにも美味しいと感じたことがなかった。美味しい。仕方なしにやっていた食べる行為が、目の前のものを欲しがってしょうがなくなっている。 「しおんにぃ、あかととおそろい!」 ぷっくりとした人差し指を思いきり差してきて、思わず顔を上げた。 その時になって、朱音の両親が微笑ましげに静かに見守っていたことに気づき、無我夢中で自分が頬張っていたことを今さらながらに恥じた。 「ご、ごめんなさい⋯⋯。きたないたべかたをしてしまって⋯⋯」 こんな食べ方をしたら、「みっともない!」と母に叩かれる。 今まで、母がある程度納得する食べ方をしてきた紫音が、いきなり早食いのような食べ方をしたことにするとは思わなかったのだろう、唖然とした表情が見え隠れしていた。 失望させてしまっただろうか。 「いい食べっぷりだったわ」 ふっと笑った母親がそう言って、紫音の頬についていたらしい生クリームを拭い取った。 きょとんとしてしまった。 頬を汚してまで食べていたことを、「いい食べっぷり」? 思ってもみなかった言葉に何も言えずにいる紫音に、母親は言葉を続けた。

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